♯14 恐いけど、可愛いヤツ

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♯14 恐いけど、可愛いヤツ

「こっちくるなぁーーっ!」  見向きもせずに、通り過ぎてしまった。 「やめーっ。あれ……?」  子供タモちゃんは怖がる手振りのまま固まって、気抜けする。  エターニャが子供タモちゃんにそっと手をあてて。 「年上組の方がうまそうに見えたんだ……。いろいろとな」  しんみりと慰めた。 「なんか、むかつくーーっ! なんか、むかつくーーっ!」  子供タモちゃんが地団駄を踏むなか。  サメ男子は鈴鹿かデッドリィに的を絞って。  まっしぐらに迫ってきた! 「確か、出てくる敵はぜんぶ魔忍法で作ってるっていってましたよね。デッドリィちゃん! 水を凍らせられますかっ?」 「任せて! マジユ、ケエラチクーーッ!」  水が一瞬にして。  サメ男子もろともカチコチに凝固した! 「ざまあよ! 乙女の貞操をなめるなーーっ!」  そして、すぐさま。 「山風(やまかぜ)谷風(たにかぜ)空っ風(からっかぜ)順風満帆(じゅんぷうまんぱん)烈風招来(れっぷうしょうらい)!」  鈴鹿が大風の神通力を唱えると。  背後から突風が吹き付けて。  タモちゃんたちは水蜘蛛で、氷上をびゅびゅんと滑走し始めた。 「これも突破するとは、やるではないか! ならば、こいつはどうだ! 魔忍法(まにんぽう)、カラシン悪戯書(いたずらが)きの(じゅつ)!」  太っちょ忍者が魔忍法を唱えると。  今度は左右の壁面に、多数の穴がポコッとあいた。  そこから! 「なんだこれっ?」 「噛みついてくるーーっ!」  エターニャや子供タモちゃんたちに飛びかかってきた、その大群は。  園児が描いたような、拙い画風の。 「ピラニアさんらぁーーーっ!」  鈴鹿が目をキランキランに輝かせて飛び跳ねる。 「こんな落書き、よくピラニアだってわかったな」  ジュテームが呆気にとられて感心するなか。 「かあひいっ、かあひいっ、かあひいすぎりゅますううっ」  鈴鹿がふらふらっと。  落書きピラニアの群れに飛び込もうとしたものだから。 「鈴鹿ちゃん、ダメ!」  デッドリィが咄嗟に抱き留めた。 「ゲームオーバーになっちゃうわ! ジュテーム、エターニャさんっ、やっつけて!」 「入り乱れちまって俺には無理だ! おまえらに当たっちまう! エターニャ、頼む!」 「もうやってる! ベーリ・エビ・ヒルアミ! だけど数が多すぎて……わああっ、取り囲まれたあああっ」  エターニャが炎の玉を連続詠唱するも間に合わず。  皆は落書きピラニアの群れの中へと、滑り込んでしまったのだった!
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