♯18 怒濤のデバッファー

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♯18 怒濤のデバッファー

「次は盾のおまえだ! 魔忍法(まにんぽう)即効(そっこう)なのん、()()ましの(じゅつ)!」  半が術を唱えた途端に。  ジュテームが微弱な電気にビビビと打たれた!  かと思えば。 「こういうのって、僕、性に合わないから、みんなの喧嘩が終わるまで端っこで見ているね!」  なで肩になったジュテームが、爽やかな笑顔を作って、隅っこに座り込んでしまった。  体育座りでこちらを見守っている。 「こいつ、デバフ使いかっ」 「エターニャさん、一気にやっちゃうわよ!」 「そうはさせるか!」  エターニャとデッドリィが魔法を詠唱するよりも早く。 「魔忍法(まにんぽう)、タモちゃん複製(ふくせい)(じゅつ)! アーンド、知識欲(ちしきよく)たまんないの(じゅつ)!」  半が唱え終わると。  タモちゃんの体が勝手に分身し始めた。 「わわっ」  複製されたタモちゃんたちは、デッドリィに群がり抱きついて。 「デッドリィお姉ちゃんっ、お医者さんごっこして!」  上目遣いのお目々パチパチ攻撃をすると。 「はうーーっ、妊、娠、降、誕! タモちゃんがお医者さん役やってええ! うぇへへーーっ……」  デッドリィは鼻の下を伸ばしきって気絶した。 「くそっ、ベーリ・エビ・ヒ……」 「あーーっ、秘伝の巻物がーーっっ!」  にんじゃのひみつと書かれた巻物が、エターニャの足下に転がってきた。 「そんな手口に引っかかるか!」 「あー、どうしよう、それには闇に葬ってきた忍者の偉業がぜんぶ書いてあるのにーっ。神のみぞ知る歴史がバレちゃうよーっ」  と、半が棒読みで慌ててみせると。 「な、なにっ。神のみぞ知る歴史がそこにっ? あうっ」  しばしの葛藤を経たのちに。  エターニャは知的好奇心を抑えきれなくなって。 「神だけに真実を独り占めさせて、たぁまるかーーっ」  史実の解読に没頭し始めた。 「さあ、タモちゃん、お主だけだぞぉ!」  半が髪切りバサミをチョキチョキさせて、詰め寄ってくる。  髪を切られてしまったら、タモちゃんは妖力が激減してしまうのだ!  タモちゃんは飛び退こうとしたのだが。  ――か、体が動かない! いつの間にっ?  半がニヤリと微笑んだ。 「呪縛の術にでもかかっちゃった? だとしたら絶体絶命だ」  半の魔力がオーラとなって燃えさかる。  タモちゃんは内心動揺しながらも、表情は平然とした顔つきを見せ。 「ひとつ、大きな不満を言っていいかしら!」 「ん? なんで?」 「ここはお化け屋敷よね? なぜお化けが出てこない!」 「タモちゃんはお化けに会いたかったの?」 「みんなでキャーキャー騒ぎたかった。お化け、登場しないかなー……」  タモちゃんが物欲しげにチラチラと見てくるので。  半は少し考えたのち。 「実は拙者がお化けだったのだ~~~っ!」  両手を垂らして声を震わせてみたのだが。 「ヤメロ。そんなオチ最悪」  タモちゃんがバッサリと切り捨ててしまうものだから。 「あんたがやらせたんでしょがっっ!」  半は恥ずかしくなって顔を赤くした。
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