♯2 せめてもの恩返し

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♯2 せめてもの恩返し

 そんな朝の日常会話をしているさなかに。  鈴鹿がスマホの通知を受けて。 「みなさん、朝ご飯ができたってジュテームさんから連絡きました。タモちゃん、歯磨き急いでください!」 「もう、終わる~」  タモちゃんが歯を磨き終えたとき。  手を滑らせて歯ブラシを落としてしまった。 「あれ?」と、自分の手の平を不可解に見つめるタモちゃんだが。 「どうしたの?」  エターニャが歯ブラシを拾い上げると。 「いや、なんでもない」  タモちゃんはそれを受け取って、口をゆすいで、顔を洗う。  デッドリィがお団子頭を鏡に映して、見栄えの良さを確認しながら。 「さすがはマンモス校。トイレも広くておっきいし! なによりジョポンのトイレは綺麗よね!」 「でも、今日が最後だと思うと、ちょっと名残惜しいです」  そう言いつつ、半が髪をポニーテールに結い上げる。 「そうか、トイレと洗面所のリフォーム、完成するの今日なんだ」  エターニャもツインテを揺らしてみせた。 「女子が5人もいると、ひとつじゃ足りん。いつか身内で戦争になる」  タモちゃんがタオルで顔を拭きつつ、くぐもった声で不平を言うと。 「ジュテームさん、貯金を全部使ったって泣いてましたけどね……」  鈴鹿は鏡越しに苦笑いをみんなに見せた。 「拙者がお世話になってしまったばっかりに~~!」 「いや、女子が4人のときから、もうすでに限界だった。半のせいじゃない」  泣きべそ顔の半を、タモちゃんが慰める。 「あたしたちで何かお金を稼げないかしら」  デッドリィと同じことを思っていたのか、みなも深く頷いて。 「また炭作りに専念するか!」 「エターニャさん、頭いいんでしょ? 炭作り以外に大儲けできる方法ないの?」  デッドリィの問いかけに。  エターニャは胸を張って目を光らせて。 「もちろんある!」 「本当っ? どんなのっ?」 「でも目立ってしまって危険だな」  腕を組んで考え込む。 「レジスタンスなのは秘密なんですよね。目立たないで稼げるものなら、拙者もお役に立ちたいです」 「うーん、目立たず大金を掴む方法はあるにはあるが……、ふつうにお金儲けをしている方が1番安全だろうなぁ」  エターニャが唸るようにため息をつく。
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