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♯3 貧すれば鈍する?
「お店はいつも夜からなんですよね。拙者たちもケーキを作って、昼間に売ったらどうですか?」
半の発案に。
「それいいわね!」
デッドリィは笑顔を弾ませた。
「ジュテームさんに教えてもらって、誰がたくさん売れるか競争しましょうか!」
「やろうやろう!」
鈴鹿の提言にタモちゃんたちは頷いて、拳を高く掲げてみせた。
レジスタンス支部に戻って来たところで。
皆が六人掛けの食卓にそれぞれつくと。
ジュテームが塩茹でしたジャガイモを1個ずつ。
トングで皆の皿の上に置いてゆく。
配り終えて。
「そら、たぁんと食え」
食事を始める挨拶をしたものだから。
「ちょ! たったこれだけ?」
タモちゃんがジャガイモに目を寄せた。
「まさか。前菜よね」
デッドリィもまん丸な目で寄り目をつくる。
「しゃれたことはいいから、メインを出してよ!」
エターニャがジュテームに訴えかけるが。
「悪いがこれがメインディッシュだ。良く噛めば満腹中枢が刺激されて、ちゃんと腹一杯になる」
ジュテームに一蹴されて、一同、ずーんと押し黙る。
「ボクたちって、これほどまでに貧乏だったんですね。想像以上です……」
「拙者がお世話になったばっかりに……」
鈴鹿と半が愕然と言葉を漏らすと。
「まあ、なんだ。増設したレストルーム、大事に使えよ?」
ジュテームはやつれた顔でカカカと笑った。
「これはいよいよ待ったなしだな」
エターニャが青ざめてイモを突っつくのを見ながら。
「ね、ねえ、ジュテーム、昼間はお店を出さないのー?」
タモちゃんが空元気で問いかけると。
「客は来てくれるだろうが、俺の体力がもたねえな」
ジュテームのうわべだけの笑顔に。
みな尻に火がついてきた。
「昼間にさ、あたしたちのケーキを売ってみたいんだけど、ダメかなっ?」
デッドリィの切羽詰まった笑顔に対して。
ジュテームは生気のない笑顔でイモを頬張りながら。
「いいんじゃね? おまえら、ケーキ作れたんだな。こんど手伝ってくれ」
だがタモちゃんたち女子は。
「作ったことない、かなぁ……」
面目ない笑顔で顔を横に振る。
「なら……ケーキ作りが上手な友達に手ほどきしてもらうとか?」
女子はまたもや顔を振る。
「どうやって作る気なんだよっ」
女子はみな、一斉にジュテームを指さした。
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