♯9 できれば儲けたい

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♯9 できれば儲けたい

「な、なんか屈辱……」 「あの苦労の結晶が1個100円ですか……」 「いったい利益はどのくらいなの」 「学費どころか、生活費の足しにもならないぞ……」  タモちゃんと半とデッドリィとエターニャは、瞳から希望の光を失って項垂れる。  それを見たジュテームが。 「最初はそんなもんだ。本当なら売り物になんぞしたくねえ出来映えだが、おまえらはそこそこ愛想(ツラ)がいい。アイドルみたいに推してもらえりゃ、すぐに儲けがでるかもしれねえぞ」  ガハハと笑う。 「あ、ジュテーム、悪い顔してるーっ!」 「腹黒いプロデューサーみたいです!」 「悪徳Pだな!」  タモちゃんと鈴鹿とエターニャに、卑しいと突っ込まれてしまったので。  ジュテームはひとつしわぶいて。 「うぉほん! とにかく、売り上げを伸ばしたやつから、少しずつ値上げしてやろうじゃないか」  それを聞いたデッドリィが。 「よぉおし! あたしは1個1000円を目指す!」  拳を握って奮い立つ。 「ボクはとりあえずひと切れ250円が目標です!」 「拙者は完売を!」 「謙虚だねぇ!」  鈴鹿も半もエターニャもやる気が蘇ってきたところで。 「みんな、がんばろーーーっ!」  タモちゃんたちは再び決起したのであった。  崩れやすいケーキを注文の品数に応じて上手に箱詰めにしてくれるという、魔法の自動販売機を、エターニャが空中浮揚の魔法を使って店頭に運んできた。  見た目はカップめんにお湯を入れて販売してくれるような、大型の取り出し口がある自販機で。  そこへ八等分にしたホールの、五人分のイチゴのショートケーキを、五つの区分に分けて装填し(内、ひとりはジュテームがひと切れ食べてしまったので七個だが)。  購入ボタンの下に、タモちゃんたちの顔写真と、短いクッキング動画へのQRコードを貼りつけて、準備はついに整った。 「ボクのケーキ、売れるでしょうか」 「こうやって見ると、デッドリィちゃんのケーキも売り物感がすごくあるわ!」 「拙者のは7個なので1番早く売り切れるはず!」 「パティシエ見習いの訳ありケーキっていうポップさえなければ最高なのに!」 「タモちゃん、たぶん後で文句を言われないための言い逃れだと、エターニャは思うぞ!」  みな心をときめかせてドキドキしながら、我が子のように可愛く見えてきた自販機に、目を細めるのであった。
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