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♯16 あたしの至極を受けてみろ!
傀儡は気持ちの悪い虫をはたき落とすかのように扮装を振りほどくと。
ある商店の窓に貼られていた広告の少女に目をやった。
そして靄の状態に戻ったのちに。
短く切りそろえたショートヘアの。
ラテン音楽でも踊り出しそうな、ミニの黒いドレスを着たメガネ少女に変化してみせた。
「その顔、ドラマで見たことあるぅ! 肖像権侵害だぁ、侵害だぁ!」
扮装を解かれてしまったタモちゃんが唇を尖らせるが。
「世の中には似た顔の人間が3人はいるのを知らないのっ? というか、タモちゃんを倒せれば姿形なんて、もうどうでもいいっ!」
「だったらさっきのバニーおじさんでいいじゃない!」
「あれはやだーーっ!」
傀儡がネコのように毛を逆立てて拒絶するものだから。
「なんか、傀儡、かわいいな」
タモちゃんは少しキュンと来た。
「また馬鹿にする気っ?」
「あ! でも、メガネの形が丸のままってことは、結構気に入ってたんじゃないのお? 天の邪鬼さんなんだからあ、もう!」
「だまれ、だまれっ! お返しに、おまえの仲間をこうしてやるっ!」
傀儡はそう言って、手の平を握り締める仕草をしてみせた。
すると、黒い靄がぐぐっと収縮し出して、中に捕らわれているジュテームたちが苦しみだした。
「や、やめろ! 八つ当たりなんてよくないぞ! みんなを返せ!」
タモちゃんの表情がシリアスに急変したのを見て。
傀儡が優越感を取り戻す。
「救世主なら自力で取り返してみれば? タモちゃんは救世主のくせに、たった五つの命も救えないの?」
傀儡は拳をいたずらに握り締めて。
「ぐぁああああっ」
ジュテームたちをおもちゃのようにいたぶり遊ぶ。
「そこまで言うならやってやる! あたしの至極を受けてみろ!」
タモちゃんの髪の毛がはためいて。
煮えたぎった鋼のような、クリムゾンレッドに染め上がっていく――。
「燃えて爆ぜ散れっ! 火炎岩迦楼羅大火球群!」
降り注いでくる炎の岩の数々が。
爆発しながら巨大化したかと思えば。
火炎を纏いし巨鳥に変化した。
巨鳥の群が紅炎を噴き出しながら。
傀儡めがけて突進する!
逃げる傀儡を四方から追い詰めて。
ぐしゃぐしゃあっと続けて直撃。
ひと塊のマグマのように閉じ込めたかと思いきや。
激しく燃え上がって、大爆発!
「あたしを無闇やたらと煽った報いよ。後悔しなさい!」
傀儡は圧殺されて。
燃え尽きたと思われた。
のだが!
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