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「セカンド、先行して情報を探れ!」
「はっ!」
シュウに命令されると一人のアサシンが闇夜に消えていく。
「セカンド?」
「二番目の忍びだからセカンド」
シュウが応える。
「へ……? もしかしてファウストってそういうこと?」
「へへっ、当たり。扶桑十人衆の通り名だ、分かりやすいだろ?」
ひどい名前だった。
どうやらファウストはファースト、つまり一番目の意味の模様。おそらくこのアサシン10人は数字の名前を持っている。
「どちらが敵でしょう?」
一番目のファウストがシュウに問う。
城内では同じ甲冑を着た兵士たちが争っている。この城に長くいる私からも、どっちが城兵なのか区別がつかなかった。
「強いほうだ。自信に満ちあふれ、自分の力を振りかざしたくてしょうがない奴」
「承知!」
あいまいな条件でも、ファウストには十分伝わった模様。それだけ二人は強いつながりがあるのかもしれない。たぶん。
さっそく、すぐ前で兵士がもみ合っている。
地面に組み伏せられた兵が剣に突きつけられ、突き刺さされまいと必死に抵抗していた。
今にも一つの命が散ろうとしている。でも私にはどっちを助けていいのか分からなかった。見た目で区別がつかないというのもあるし、どちらも王室の臣下には変わりないから。
だがシュウは迷わなかった。
馬乗りになり、とどめを刺そうとしている兵士に背中から襲い掛かり、刀で甲冑ごと突き刺した。
助かった兵士は安堵して礼を言おうとするけど、助けてくれた人物が同僚でないことに驚く。
シュウが異国のアサシンなんだから無理もない。
「とっとといけ! 仲間を助けろ!」
「は、はい!!」
兵士は訳が分からないまま、すぐに立ち上がって仲間を助けにいく。
「次はあいつが攻撃した奴を倒すぞ」
どうやら助けた兵に敵を見分けてもらうつもりらしい。
「そもそも間違ってたらどうするのよ」
「生き残ったほうが反乱軍だったら、俺にも向かってくるはずだ。自分たちをよそ者が助けてくれるわけないって知ってるからな。だが城兵なら、わらにもすがりたいと思っているはずだ」
「そういうもの……?」
私にはこの戦場の空気にまったくついていけない。どうしてそんなに冷たいんだろう。どうして簡単に人を殺せるんだろう。
もちろんそんなこと言っちゃいけないのは分かる。
仲間は助けたい。敵もできれば助けたい。……そんなの私のワガママだから。シュウが介入しなくてもいっぱい死ぬし、しなかったら仲間はきっと全滅する。
ここは戦場。戦士たちの仕事場。私みたいな戦を知らない王族が立ち入っていい場所じゃないんだ。
シュウたちは、次々に反乱軍兵士に戦いを仕掛けていく。
みんなアサシンとあって素早い動き、少ない手数で敵を確実に仕留めていた。私は何もすることができず、ただ彼らのあとを追っていくだけ。
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