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「やめてください」
私は無礼は承知の上で、船長の腕を掴んだ。ちょうど船から伸びる光が消えたところで明滅がとまった。そして時間の流れが止まり、宇宙から一つ、声が消えた。だが、私には関係のないことだった。
「どうして止める! 分からないのか? あの星は生きている。我々に危害は加えるつもりはないと、白旗をあげている。我々にはそれに答える義務がある!」
船長は興奮して息づかいが荒くなっていた。静寂が包む船内で、彼の声の残響が耳鳴りのように鼓膜を揺らした。外の星たちが、いつもより激しく瞬いているように思えた。
「落ち着いてください。星は生きてなんかいませんよ。嗚呼、船長。あなたは長旅で疲れているんだ。少し休んだ方がいい。私は――」言いかけた時だった。
強い風が吹いた。恐らく、太陽風のようなものだろう。どこからともなく来た強風が宇宙船を揺らし、風に押されたいくつもの隕石が船体にぶつかった。その際に電源系統がやられたのか、電灯が全て消え、宇宙の漆黒が船内にまで及んだ。
「見ろ! あの星だ。あの青い星が、我々から敵意を感じとって憤怒しているのだ!」
「バカな!」
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