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「やめろ! 水沼さんの声で名前を呼ぶな! あの水沼さんが怪物な訳ないだろ! そんな訳ないんだ! そんな訳……」  僕は段々とそれが事実であると感じてきて、声が出なくなった。わなわなと声が震え始め、手も震え始めた。それは足腰にも伝染した。僕は力が抜けたように、ズリズリと背中をブロック塀に擦りながら地面に尻をつけた。 「本当に水沼さんなの?」  僕は少し涙目になりながら怪物に言った。怪物はぎょろりとした目を細めて、こくりと頷いた。その表情は笑っているようにも、泣いているようにも見えた。 「水沼千紗(ちさ)だよ。比嘉くんのクラスメイトの」  水沼さんが僕に近づく。 「信じてくれる?」  僕は頷きたくなかったが、少ししてから頷いた。  かくして、水沼さんが夜になると彼女の存在とは程遠い怪物になってしまうことを教えてくれた。遺伝でも何でも無くて、彼女もどうしてそうなってしまうのか分からないらしい。病院に行っても当然突き返されるだけで、何も情報は得られないし、治療もできない。  そしてこの秘密を共有してから、女神と下等生物の絶対に交わることのない僕たちの関係性に変化をもたらした。
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