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僕が恋焦がれている水沼さんは、夜になると怪物になるらしい。
僕たちは互いの家から近い公園にやって来て、ベンチに座った。僕よりも5倍大きな体をしている水沼さんは小さなベンチだと座りにくそうにしていた。
水沼さんの怪物の姿を目撃してから知ったのだが、どうやら水沼さんとは同じ学区に住んでおり、小中と同じだったらしい。僕が通っていた小学校と中学校はどちらもマンモス校として知られており、1学年最低12クラスはいた。だから水沼さんの存在を知らなかったらしい。後々卒業アルバムをチェックしたら、確かにそこには水沼さんの名前があった。
小中と水沼さんの可愛さはまったく変わらなくて、どうして学校で噂にならなかったのだろうと僕は不思議に思った。いや、もしかしたら話題にはなっていたが、僕が単に知らなかっただけかもしれない。
小中の僕は友達と呼べる相手も片手で数える程度しかおらず、そいつらも情報通ではなかったから情報が回ってこなかったのかもしれない。
僕が水沼さんを知ったきっかけは、高校1年生の時に初めて同じクラスになって一目惚れをしたのが切っ掛けだった。きっと水沼さんと同じクラスにならなければ僕は一生水沼さんを知らなかっただろう。
「水沼さんは僕のこと知ってたの?」
「知ってたよ。だって同じ小学校と中学校だよ? 知らない方がおかしいよ」
水沼さんがギョロっと大きな瞳で僕を見る。僕はギョロっと動いた瞳にかすかに悲鳴を上げてしまった。やはりまだこの姿にはなれない。心臓がバクバクと鳴っている。この醜い姿で、可愛らしい水沼さんの声が聞こえるのは、ギャップがすごくて頭がおかしくなりそうだ。
「水沼さんが僕を認識してるなんて、思わなかったよ……」
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