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「なんで?」 「だってこんな下等生物を……」 「下等生物!?」  大きな瞳がさらに大きく見開き、真っ黒な体毛も逆立つ。大きな口の中からは真っ白な牙が見え、僕はまたヒッと悲鳴をあげた。水沼さんが「あ、ごめん」と言うと、体を縮めようとしているのかきゅっとコンパクトな態勢を取った。コンパクトにはなれてないけど。 「なんでそんなこと言うのかなぁ。私も比嘉くんも同じ人間じゃない」 「でも人間の中にもレベル分けというか属性というか階級というものがあって」 「何古いこと言ってるの。そんなものはないよ」 「あるよ。水沼さんみたいな太陽なみたいな人と、僕みたいなじめっとした泥沼が似合う奴は関わってはいけないんだ」  水沼さんが首を傾げた。どうやら理解できていないようだ。 「水沼さんには理解できないかもしれないけど、僕みたいな奴が水沼さんに話しかけたらそりゃ睨まれるし、怪しまれるし、虐められるし。だから関わっちゃいけないんだ。僕と水沼さんは生きている世界線が違う」 「同じ世界線で生きてるよ。生きてなかったら、こうして喋れてないもん」 「違う、文字通りに捉えるんじゃなくて、なんていうのかなぁ。取り合えず違うんだよ!」 「違わない」 「違う」 「違わない!」 「違う!」 「違わない!!」 「違う!!」  「ガオォォォォォォォォォォォォ!!!!」と突然水沼さんが吠えた。大きな鋭い牙が見え、僕は突然吠えられたことにパニックになってベンチから転がり落ちた。急いで水沼さんから距離を取り、ちらっと様子を窺う。逆立った毛と大きな瞳、鋭い牙と大きな口。水沼さんの声をしていても、今は姿が怪物だからとても怖かった。
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