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 僕は半分涙目になりながら、「えっと……」と言う。耳元で叫ばれたため、声が聞き取り辛かった。血が出ていないからどうやら鼓膜は破れていないようだ。そこだけホッとした。 「違わないわ、ボケ!! 人間に上等も下等もないよ! みんな一緒だよ。そうやって勝手にグループ分けして、偏見とか差別とか産んでるのは比嘉くんじゃない!! そうやって勝手にフィルターかけて、遠ざけて、すっごい迷惑だから!!」  ぼんやりとしていてはっきりとは聞き取れなかったが、あらかた内容は分かった。僕は「で、でも……」と言う。 「でもじゃない!」 「でも、この考えを持ってるのは僕だけじゃないし。そういう意見を持っている人が多いから、陰キャとか陽キャとかのグループ分けが産まれてるわけで……」 「確かにそう思う人はいるかもしれないけど、私は思わない」  水沼さんがはっきりと言った。  もし水沼さんが怪物の姿をしていなければ、こんなに口論することもできなかった。僕は水沼さんの姿を前にしたら手も足も出ないのだから、口答えすることも、意見をすることも、会話をすることだってできないのだ。遠目から見るので精一杯だった。 「てか、そんなこと言ったら見ることさえも烏滸がましいんじゃないの? ずっとチラチラ見てたくせに」 「気づいてたの!?」 「気づいてるよ! あんなの気づかない訳ないじゃん! ずっと見られてるなぁと思ってたよ!」  僕は急に恥ずかしくなり、その場によろよろと座り込んでしまった。 「私のこと好きなんだろうなぁって思ってたよ、ずっと」 「えっ、いやっ、そのっ!!」 「好きじゃないの?」 「……好きです」
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