第3話【初めての遠出、王都のお祭りへ】

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 大きなボールに乗って片足立ちをする者、炎を口から噴き出す者、帽子から鳩を何羽も取り出す者。  奇抜な格好をした大道芸人がパフォーマンスをしていた。   「すごいわ! クライム、もっと近くで見てみましょう!」 「お嬢様、お待ち下さい!」  繋いでいた手がわらわら集まる人の波で切れてしまいエヴァは流されていった。 「あ!」  流れに流れ、いつの間にか路地の入口付近まで来てしまったらしい。  大道芸人の元へ行こうとしたがあまりにも混んでて行けそうにない。歓声が大きくなるにつれ人々も集まっているみたいだ。  仕方がないので先程までクライムといた屋台まで戻ろうと思ったが、人が多すぎて道が見えず分からなくなってしまった。 「ど、どうしよう……これってまさか……はぐれちゃったってこと?」  もしはぐれた場合、事前に王都の正門で合流と決めていたが、エヴァにとって初めての場所で人も多く道がわからない。完全に迷子だ。   「あの、すみません道を尋ねたいのですが……」 「は? ああ、ごめん。この街の人間じゃないから分からないんだ。他を当たってくれ」  行き交う人に声をかけたがお祭りのせいか街の住人以外も多く、なかなか教えてもらえない。 「困ったわ……」 (今頃クライムも慌ててるかしら……)    慌てるクライムも見たいな、と頭の隅で考えていると、ぽつりと一滴の水が帽子にあたる。  顔を上げると先程までの晴天から一転して曇り空になっていた。 「雨が降りそうね」  どうしようか悩んでしばらくオロオロしていると、城下町の住人らしきふくよかな年配の女性が話しかけてきてビクッとする。 「あんた、さっきからここにいるけど迷子かい?」 「は、はい。連れとはぐれてしまって……」 「なるほどね。落ち合う場所とか決まってるのかい?」 「正門なんですけど……そこに行くまでに人混みが凄くて」 「ああ、広場の方ね。あの賑わいは確かに今はやめておいた方がいい。正門へ行くなら路地裏を通って行きな」  そう言って路地裏を指さす。生活路として使われてそうなので特に怪しい雰囲気はないが、土地勘のないエヴァは迷いそうだ。 「で……でも……道が複雑そうなのでどうやって通り抜ければいいのか……」 「これから路地裏を通って酒場に行く用事があるからついでに近くまで案内してあげるよ、ついてきな」 「あ、ありがとうございます!」  親切な申し出にパッと笑顔になる。   (優しい方に巡り会えて良かった。これでクライムと合流できるわ)
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