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人が良さそうな女性の後に続き路地裏へ入って行く。
するとすぐにポツ、ポツと雨が降り出したかと思ったら、ザアアという音と共に勢いよく降ってきてしまった。
遠くでゴロゴロと鳴る雷。エヴァの嫌いな音だ。
「お嬢ちゃん走れるかい!? 曲がり角に酒場があるからそこまで走るよ!」
「は、はい!」
ばしゃばしゃと雨の中走る二人。
テラスが解放された大衆酒場に到着すると、同じように雨宿りする者や客で賑わっていた。
「ふー……酷い雨だねぇ、せっかくの祭りだっていうのに」
「そ、そうですね……」
なんとか到着したが全身びしょ濡れになってしまった。
帽子をかぶっていなかったらもっと酷かったかもしれない。
「あたしは荷物を置いて来るからここでちょっと待ってな。正門まではすぐそこなんだけどこの雨じゃねぇ。その間に止んでくれりゃいいが……」
ブツブツ言いながら女性はカウンターの方へ向かって行った。
エヴァはドシャ降りの空を見上げ憂鬱な気分になる。
(この雨の感じ……まるであの時のよう……)
はぁ……とため息をついて嫌な気持ちを吐き出す。
お店の時計を見たところまだ日が沈む時間帯ではないが、刻一刻と近づいてきている。分厚い雲に覆われて今は太陽が見えない。
とはいえ完全な夜ではないので吸血鬼が現れるとは思えないが不安は拭えなかった。
(私のせいでまた迷惑をかけてしまったわ……――帰りもこれじゃあ夜になってしまいそうだし……)
不安に思いつつ一人で猛省していると、視界の端に黒い影がひとつ。
「止まないですね、雨」
突然その黒い影に話しかけられ驚いて顔を向けると、そこには黒いコート、手袋、ブーツ、シルクハットと全身黒づくめの紳士が一人立っていた。
どうやらエヴァに話しかけたらしい。
「失礼。突然話かけて驚かせてしまいましたね。貴女はこの雨が止むのを待っているようでしたのでつい」
「え? は、はい……、その……そうですね」
戸惑いながら慌てて返事をするエヴァにくすりと笑みを向ける紳士。
美しい長い金髪に白い肌、赤い瞳の若い男性だった。
赤い、瞳――――。
ゾクリ。
全身に駆け抜ける嫌な予感。なんでだろう。吸血鬼の赤い瞳を連想させるから?
でも今は太陽が隠れているとはいえ日中のはずだ。彼は違う。
だって、吸血鬼は夜しか活動出来ないのだから。
戸惑っていると、彼は気にした様子もなく話を続ける。
「これを。貴女の帽子から落ちるのを見掛けたので拾いました」
「あ」
差し出されたのは先程お祭りで貰った花冠。
雨に濡れているが美しいままだ。
「あ、ありがとうございます」
急いで走っていたので落としたことに気が付かなかったのだろう。素直に礼を言いながらぎこちない笑顔で受け取る。
彼はそんな態度のエヴァに気にせずニコっと笑い返した。
(赤い瞳だからって警戒しちゃったけど……失礼よね)
人畜無害そうな笑顔に緊張を緩めほっとした。
「ああ……お迎えが来たようですよ」
「え?」
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