18人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
汚れた身体を洗い流してから寝た翌朝、父であるエイブラハムが帰宅したので二人で父の待つ執務室に向かい報告をした。
「……ひとまず分かった」
神妙な面持ちで考え込む父、エイブラハム伯爵は、深いため息をつきながらエヴァとクライムから事の顛末を聞いた。もの凄く怒られることを覚悟していたエヴァは少しだけホッとする。
クライムは自分がこれから処分を受けるかもしれないというのにいつもどおり無表情のまま淡々としていた。
そんな彼を見てエヴァは心が痛くなる。
(クライムを処分なんてさせない……怒られるのは私だけで十分よ)
例え彼が吸血鬼だったとしても、怖いと本能が言っていてもまだ分からないことが多い。
それに確かなのは、クライムはエヴァを自分の意思で助けてくれたという事実。
今だっていつもどおりのクライムだ。きっと彼は普通の吸血鬼とは違う。
そう考えていると、エイブラハムは徐に立ち上がり背後のカーテンと窓を思いきり開けた。
初夏の太陽の光と優しい木々の香りが風にのって室内を巡る。
「クライム、こっちに来い」
呼ばれた彼はすぐに傍へ向かう。
窓から差し込む眩しい太陽の光がクライムの身体を照らしたが、彼は特に眩しそうにするでもなく静かに佇む。
「やはりな……」
「お父様、これは?」
つまりどういうこと? という疑問を口にする前にエイブラハムは答えた。
「クライムは半吸血鬼、ダンピールだ」
最初のコメントを投稿しよう!