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さて……と振り向いた父、エイブラハムは笑顔を貼り付けながらとても……とても怒っていた。
エヴァはそういえばまだ説教がなかったことを思い出し一気に青ざめる。
ぬっと近づく父に怒鳴られると身構え「ひっ」と声を出すも、降ってきたのは力強い抱擁。
「お……お父様……くるし」
「この……馬鹿者がっ!」
大きな身体で小さく震える父。
ああそうだ。私はまた――父を心配させてしまった。
「ごめんなさい……」
力強い抱擁が心配の度合いを表しているかのようだった。父の広い背中に腕を回し、生きていることを実感させなければ。
「ごめんなさい……お父様……」
ゆっくり離れると父の目が赤くなっていた。
何者にも負けない強い父を、ここまで悲しませてしまったことに酷く申し訳ない気持ちになる。
ポン、と頭に手を置かれ、優しく撫でられた。
「オレも……お前の気持ちに気付いてやれなくてすまんかったな……。行きたかったよな、祭り」
それで今回の事件に繋がったと理解したエイブラハムは、エヴァの外に憧れる気持ちをくんであげられなかったことを後悔した。
「今度から正直にオレに言え。いいな? 内容にもよるがクライムと複数の騎士をつけてやるし、居場所がわかればいざという時オレもお前を守りやすい。わかったな」
「はい……お父様」
じんわりと温かい気持ちが溢れ、エヴァは目の奥が熱くなるのを感じながら小さく微笑んだ。
(ありがとうございます、お父様)
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