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次の日からクライムは再びエヴァの騎士の任務に就いた。
エヴァは嬉しくて堪らず二人きりになれるいつものガゼボに行く。暑いから隣に座るよう進めるも、クライムは頑なに座ろうとせず太陽の下いつもどおり無表情で佇むばかりだ。
「クライム、さすがに暑いでしょう? 無理しないで日陰に入って」
「いえ、お構いなく」
いくら灰にならないといっても人間でも暑いと感じる季節。それなのにクライムときたら全く言う事を聞いてくれないのでエヴァは困ってしまった。
エヴァと違い何故か汗ひとつかいた様子はないが、確実に具合が悪そうだ。昨日帰宅してすぐと同様、下手したらそれ以上に顔が青白くこけて見える。
(これは……なんとかして休ませないとダメかもしれないわね)
エヴァの護衛の任を真面目に全うするつもりでいる彼は、素直に休んでと言っても休んでくれないだろう。となればエヴァが涼しいところに行くしかないのだが、距離を取られるのでそれもあまり意味がなさそうだ。
(ひょっとしてクライムが私との距離を取りたがっているのって……)
父が言っていた言葉を思い出す。
”半分とはいえ吸血鬼。いつお前に牙を向くかわからんのだ”
ぎゅっ、と無意識に母の形見のネックレスを握る。
他の吸血鬼とは違いエヴァの血に当てられ発狂する様子がないだけで、ひょっとしたら血が欲しいのかもしれない。人間の血を支給されていると聞いたけど、ちゃんと飲めていないのかもしれない。
でも――”人間でいたい”と言っていた彼にそんなことを確認したら、また傷つけないだろうか。
(クライムがダンピールでも……私は…………)
彼がヒーローであることには変わりない。いつだってエヴァを助けてくれた。
それは吸血鬼として目覚めてからも、何も変わらなかった。
それなのに彼を拒絶してしまった。
このままでは倒れてしまうかもしれない。彼自身も自分で自分を否定しているのかもしれないから。
エヴァは伏せていた顔を上げ、遠くを眺めているクライムを見つめ決意した。
(もう、迷わない)
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