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唇を離すと既に血は止まっていた。
エヴァはクライムに体重を預けた状態でくたっとしており身体も心なしか熱い。
暴力的な渇きが治まり頭が冷静になると、クライムは雇い主の娘を腕に抱いているこの状況がとてもマズいことに気付く。
「すみません……無理をさせてしまいました」
回していた腕を離し肩に手をかけようとすると、離されまいとエヴァの方からギュッとしがみ付いてきたので思考が停止した。
「待って、こ、腰が抜けて……立てないの」
「…………」
見ると耳まで真っ赤にしてぎゅうっとしがみ付いてくる。触れ合う胸からエヴァの心臓の鼓動がこちらまで伝わり、クライムも内心で動揺した。
(別の意味で……このままではマズい)
エヴァのことは幼い頃から見守ってきたので、異性というより子供だと思っていたはずだったが――――。
(なんだ、この可愛い生物は)
昔から同じ事を思っていたはずだった。けど今この時は明確に違うとわかる。
こんなに触れ合ったのは初めてで、先ほどの彼女の反応がもう子供ではなくて。
薄暗い部屋でも分かるエヴァの白い肌から目が離せない。
「きゃっ」
スッと伸ばした腕は理性を総動員してエヴァの膝裏と腰に回すことでなんとか落ち着き、お姫様抱っこをして抱え上げる。
いつもの無表情の仮面をつけたクライムは、何でもないように扉に向かった。
「部屋までお送りします」
「ま、待って」
少しとはいえ血を吸ったから顔色が悪くなっていないか心配だったが、茹蛸のように真っ赤になるエヴァは慌ててクライムを止める。
「私、同情や責任感でこんな行動に出た訳じゃないからね」
「……!」
エヴァはクライムを真っ直ぐ見つめた。自分の決意を理解してもらうために。
「私の意思で、私があげたいから決めたの。私の血はあなたにだけのものって決めたの」
「エヴァ様……」
「だからもう我慢しないで。もう……離れないで」
そう言って首に腕を回し再びぎゅうっとしがみ付く。
「…………はい……」
クライムは目の奥が熱くなるのを感じながら、エヴァの首元に顔をうずめた。
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