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(羨ましい……ですって?)
信じられない言葉に思わず眉間にシワが寄る。
この力のせいで一体何人の大切な人達が亡くなったと思ってるんだろうと不快な気持ちになった。
「それに君はとても美しい! 血のように赤く美しい髪に灰みがかった青緑色の瞳、これが吸血鬼好みの見た目なんだね」
「ちょっ……!」
そう言ってベタベタと髪やら頬やら触ってくるのでゾワッとしたエヴァは払いのけようと一歩下がる。けれど彼は全く意に介さない。
(なんなのこの人!? 私にじゃなくて本当に血にしか興味ないじゃない!)
あまりの無礼さにさっきから置物のように護衛に徹しているクライムに助けを求めるため目をやると、既にエヴァの視界は黒い騎士服の背中でいっぱいになっていた。
「アレクシス様、エヴァお嬢様にご無礼はおやめください」
アレクシスから守るように二人の間に立った騎士、クライムは鋭い目で睨みつける。
「おや失礼、僕としたことがつい興奮してしまって」
アレクシスは悪びれた様子もなくすんなり下がった。急に出てきた騎士には全く興味がなさそうである。
ほっとしたエヴァはこほん、とひとつ咳払いをして聞きたかった話題に戻す。
「それで……吸血鬼を研究していらっしゃる侯爵家のアレクシス様が、な、何故私に……?」
「そうそう! 忘れてたよ、君に求婚しにきたんだ。僕と結婚してくれないか?」
「え……嫌……です…………」
「まぁまぁそんなこと言わず! 君の父君からも君を口説く許可は得ているんだ。まずは僕を知ることから始めてみておくれ」
青い顔でぶんぶんと顔を横に振り本気で嫌がっていると訴える。けれどこの男にはエヴァの気持ちなどどうでもいいらしい。
チラ、とクライムを見るともう先程のように護衛に徹していて真顔で傍に控えるばかり。
どうやらこの件に関してはアレクシスが物理的に害さない限り我関せずらしい。護衛の鏡のようだ。憎らしい。
(目の前で私が他の男に口説かれているのに全く興味がない感じ……少しも嫉妬はしないってこと?)
面白くない。実に面白くなかった。
急激に気分が降下し不機嫌になっていく。
アレクシスはそんなエヴァの様子に全く気が付かない、というより興味がないのだろう。そのまま一方的に自分のことをペラペラと話している。
「……わかりました」
「! では」
「あなたの求婚は受け入れられませんが……まずはお互いを知ることからなら……大丈夫です」
それだけ言うとアレクシスは喜んだ。
エヴァ自体には興味がなさそうなのでその反応には複雑だったが、エヴァとしても彼には聞きたいことがいくつかあったので仕方なく敷地内にあるガーデンへと案内することにした。
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