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第1話【吸血鬼を惹き寄せる女の子】
ゴロゴロ、と空に響き渡る低音。
雷雨の中走らせていた馬車は横転し、周りを取り囲むように複数の赤い目が一人の少女に注がれていた。
赤い目と口は弧を描き、人の姿をしているようで人ではないもの達。覗く口元の牙。
(私のせいでお母様と皆が……)
この血のせいで――。
少女は震える小さな身体で、自身をかばい絶命した母の骸を抱え叫ぶ。
「吸血鬼なんて……大嫌い!」
瞬間――ザァ、と目の前の吸血鬼達が灰になる。
突如現れた黒い人影が素早くザシュッ、ザシュッ、と銀の刃で吸血鬼たちを貫いていき、真っ白な灰が舞った。
見上げるといつの間にか剣を携えた十五、六歳くらいの黒髪の少年が彼女を守るように立っていた。彼は金色の瞳を輝かせ無表情に見下ろす。
あれだけ降り注いでいた雷雨は止み、分厚い雲を切り裂く月の光を逆光にした少年の姿は神々しくて――。
目が、離せない。
(綺麗……――――)
少年はゆっくりと口を開いた。
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