第7話【婚約者候補?アレクシス】

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 ブラックフォード家の広い敷地内にあるガーデンへとアレクシスを案内する。ここはエヴァがいつもお昼に使うガゼボがある場所だった。  もちろん後ろにはクライム、少し離れたところにも複数の騎士と侍女も数人ついてきていた。 「へ~。良いところだね」 「……ありがとうごございます」  咲き誇る薔薇の他にも色んな花々があり、吸血鬼のことばかり喋っていたアレクシスも目を奪われてくれてひとまず安心した。  そのうちのひとつ、赤い薔薇が咲いている場所で一旦歩みを止めると、エヴァはアレクシスを振り返った。 「あの……父、エイブラハムからの手紙を拝読しても宜しいでしょうか?」 「ああ、執事には見せたけど君に渡すのを忘れていたよ。どうぞ」  差し出された簡素な手紙を受け取ると、そこにはブラックフォードの家紋が押された封蝋、中には見知った父の字が並んでいた。 『拝啓 アレクシス・カークランド殿    我が娘エヴァに興味を持ってくれたことにまずは感謝を。  貴殿が娘の血の記憶について研究所の魔法で調べてくれるのは大いに賛成している。なんせ最後に調べたのは百年以上前と聞くからな。新たな発見があるかもしれん。  これで娘が吸血鬼の呪縛から解放されるならいい。  だが物理的に調べるのは絶対に許さん。痛いことも無しだ。    それから求婚の許可はするが、娘が貴殿に好意を持つまでは絶対に触れるな。研究所に連れて行くのも必ず娘の同意を得ること。  娘は人見知りをするだろうから、絶対に貴殿の吸血鬼研究の欲を優先しないように。口説くなら紳士的に心掛けるように。 敬具』  内容に唖然とする。  アレクシスがこういう性格だと分かった上でかなり注意をしているようだが……。 (結局お父様の心配どおりになっているわね……)  一応彼なりにエヴァを口説いているつもりらしいが、全く心がこもっていない。  ガーデンに着いてからの最初の会話も吸血鬼の話ばかりで興味深かったものの、結果的にかなり気が滅入った。
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