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「疲れたわ……」
アレクシスが帰ってからドッと疲れたエヴァはクライムに部屋まで送ってもらい、力なく長椅子にもたれかかる。
「お嬢様、傷の手当てを致しましょう。アルコールで消毒しなければ」
「……そうね」
部屋にある救急箱を持っていたクライムはエヴァの足元に傅き手をそっと持ち上げる。
「私がいながらお嬢様に傷を負わせてしまうなど……申し訳ありません」
眉間にシワを寄せ悔しそうな顔で傷を見つめるクライムに、思わずくす、と笑みがもれる。
「これくらい気にしないで、大した傷じゃないわ。……あ……飲む?」
血はもう止まっているが深く刺さった右手の人差し指をクライムの目の前に差し出す。
すると彼は一瞬戸惑い、すぐに瞳がほんのり赤く光った。
薄い唇がゆっくりと開かれ小さな人差し指が吸い込まれていく。
くちゅ、という音と共に温かい舌で舐められ、エヴァの身体がゾクゾクと悦びで震えた。
ちゅ、ちゅ、と小さく吸う音が静かな室内に響く。
「んっ……」
なんだかとても恥ずかしいことをしているような気がして、もじもじと身体をよじりながら顔を背ける。
しかし指はすぐに解放された。
「も、もういいの……?」
クライムはふぅ……と息を整えた後、何事もなかったかのようにアルコールで濡らした清潔な布でエヴァの指を拭い、包帯を丁寧に巻いていった。
「昨夜頂いたので……これ以上吸えばお嬢様のお身体に不調をきたします」
「……気にしなくていいのに」
(……でも……私の身体のことを気遣ってくれて嬉しい……)
頬を赤く染めて照れるエヴァに、クライムは困ったような笑みを向けた。
「どうか私のために無茶はしないでください。それと……あの男には十分お気をつけください」
「アレクシス様のこと?」
「はい。…………それでは私はこれで失礼します」
パタン、と閉まる扉を見ながら、ひょっとして嫉妬してくれた? と考えた。
「いえ……そんなわけないわ…………」
(なんだか私ばかり意識して……悔しい)
エヴァはぼんやりしながら無意識に、クライムが巻いてくれた包帯を愛おしそうに撫でていた。
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