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※吸血シーンがあります。
父エイブラハムに報告後自室に下がると、クライムも最後まで付いて来てくれた。
また道中アレクシスのような男に捕まっては困ると言って父も了承してくれたのだ。
「ありがとうクライム。あなたも今日は疲れたでしょう? 部屋に戻って……」
振り向くと、頭を抱えながら息を乱しているクライム。
大変! と思い近づくとその目は赤く光っていて。
「ひょっとしてまた……血を飲めていないの?」
恐る恐る訊くとクライムは言いにくそうに答える。
「いえ…………奴らの血を……討伐する際に摂取していたのですが……やはり足りなかったようです」
苦しそうに息を乱す彼はエヴァの白い喉をじっと見つめた。
まるで獲物を狙うような目つき。
ゾクっと身体を駆け抜けるそれは、悪寒とは違う感覚だと分かった。
(さっきまでは平気そうに見えていたけれど……ずっと体調が悪いのを隠していたのね)
エヴァは覚悟を決めるように息をひとつ吐いてから、ネックレスを外し机の上に置いた。
ドキドキと鼓動が早くなるのを感じ、今度はゆっくりと首元のリボンに手をかける。
ゴクリと喉を鳴らし、まるでスローモーションのような感覚で解かれるリボンを目で追っていたクライムは、ハッとして視線を逸らす。
「ダメです……これ以上血を頂く訳には…………」
「クライム」
両手でそっと彼の頬を挟み、ふんわり微笑みかけた。
「私の血を吸って」
瞳が一層赤く輝きを増し、タカが外れたようにエヴァの喉に喰らいつく。
なるべく痛みを少なくしようとする彼の気遣いなのか、白い喉を愛おしそうに舌で舐ると、ためらいもなく歯を立てた。
「んっ」
じゅる、じゅるるる、ゴク、ゴク――――。
耳元で聞こえるそれは、酷く甘美な毒だった。
恐ろしいことをされているはずなのに全身を駆け抜けるのは快感で、思わず吐息が漏れる。
「あ……っ」
すぐに唇を離されると、エヴァの手首をグイっと掴みくるりと体勢を変えられ、近くの扉に押し付けた。
クライムの身体に覆われる形で後ろから再び首に食いつかれ、エヴァは息を乱した。
耳も顔も真っ赤に染まったまま甘い吐息を漏らす。
逃がすまいと彼の手が更にガッチリとエヴァを包み込んだ。
触れられる唇と身体が熱い。まるで男女の秘め事のよう。
生理的な涙を浮かべ震えながらクライムに身を委ねるエヴァは、彼の欲望を満たしている喜びに包まれていた。
自分の血が、自分の血だけがクライムを満たしていると。
だがその時の二人は気付かなかった。
薄く開いた部屋の扉から、アレクシスがじっとこちらを見ていたことを――――。
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