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「な、クライム。お姫さんの相手はどんな奴が相応しいと思う? お前以外だったらの話な」
「そうそう。クライムさんじゃ我々レベルの騎士は敵いませんからね。きっと貴方が選ばれるでしょうがお見合いをしているくらいですから、団長は色んな男性に引き合わせてみたいのでしょう。どんな男性が彼女のお眼鏡にかなうか気になります」
「お姫様の男性の好みが知りたいです!」
いつの間にか話題が戻っていたのか、非常に応えづらい話題を振られてしまいクライムは困った。
「……エヴァ様の性格は把握しているが、さすがに異性の好みまでは分からない」
「じゃあお前から見てどんな性格なんだ? やっぱり深窓の令嬢って感じの控えめで大人しい女性なのか?」
クライムは顎に手を添えて普段のエヴァを思い浮かべる。
自分にとっては好ましい普通の光景だが、女性のことなので勝手に伝えて良いのか迷う。
(言葉を慎重に選んで伝えた方がいいか)
「読書が好きで、花は薔薇を好んでいる。特に白と黄色が好きだったはずだ。好物はレモンパイで……」
興味深く聞き入る団員達は、うんうんそれで? と期待の眼差しを向けてくる。今のところイメージを脱していないらしい。
「あとは……親しい人間以外には結構人見知りをされる」
「普段はどんな感じなんだ?」
「……活発で世間知らずで、でも我慢強いお方だ。そして常に相手を気遣える優しさも持っている」
皆、おお、と浮足立った。
「可愛らしいお方なのですね」
「令嬢っていったら気が強くて我儘なイメージが強いよな」
「お姫様は控えめな女性なんでしょうね! 守ってあげたくなるなぁ~」
彼女に相応しい男……か。と考えながら彼らを眺める。
一生大切に守れるほどの強い者であってほしい。
例え外に出られなくても、彼女を退屈させないような、暗い表情をさせないような者でなくては。
クライムはグッと拳を握りしめる。
将来エヴァの隣にいるのが自分ではないというだけで心が抉られるようだ。
こんな感情を抱いてはいけないのに。
(俺の存在意義は? もう彼女のヒーローではいられなくなる)
嫌だ――――。
目の前で楽しそうに談笑している団員達を見て、わずかに虚しさを覚えた。
もしも自分が彼らのように人間で、ダンピールじゃなければ…………彼女に選ばれただろうか――――。
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