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夕食の席へ行くと、父、エイブラハムが席に着いていた。
エヴァに似た赤髪、聖騎士団団長をやっているだけある逞しい体躯。
一見怖そうな外見だがエヴァを視界にいれた途端あふれんばかりの笑顔になった。
「お父様!」
「エヴァ! すまんなーなかなか帰って来られなくて! 会いたかったよ」
二人は笑顔で抱擁を交わす。
「怪我はしていないか? 具合も悪くないか?」
「騎士の方たちやクライムが毎日守ってくれるので私は健康そのものですわ。そもそもお父様の聖なる結界のおかげで心配無用です」
「そうかそうか! お前はここにいる限り安心安全だからなぁ!」
ハハハと大笑いしながら娘の肩を軽く叩く。痛い。
相変わらず過保護なんだからと呆れるも、母を亡くして以来過剰になるのも仕方ないと受け入れるエヴァ。
共に食事を終え寝室に引っ込もうとする父は大事なことを忘れてた、とエヴァを呼んだ。
食事中とは一転して真剣な顔で見つめられ、エヴァにも緊張が走る。
「三日後の王都での祭りに備えて明日から聖騎士団は街の警備に就かなきゃならん。おそらく野良吸血鬼共も人に引き寄せられ街道に集まるだろう。オレは家にいてやれねぇから、お前は騎士たちの迷惑にならないよう戸締りをしっかりしてちゃんと部屋に閉じこもっていろ。いいな?」
”閉じこもっていろ――――”
その言葉が重く沈む。
そう、これがエヴァに約束された未来。許されない自由。
「決してまた外に出ようなんて思わないこと、何かあったらすぐクライムに助けてもらうこと、わかったな?」
「……わかりました……」
暗い表情で返事をする娘に多少申し訳ないと感じるエイブラハムだったが、彼からしてもたった一人の家族である娘を何が何でも失いたくなかった。
「オレにもう二度と悲しい想いはさせないでくれ……。お前まで失いたくない。わかってくれるな?」
「はい……お父様」
エイブラハムは後ろに控えるクライムに目配せし、エヴァの頭を撫でてから自室へ入って行った。
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