はじまり

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 先輩は格好良いから、ビジュアル的にも好みだし、お近づきになれたらなぁと思ったりするけど、学年も違うし、学年一人気で常に女の子と一緒に居る先輩と接点を持つのはなかなかに難しい。  それに、気にはなるけど付き合いたいかと問われると、ちょっと悩んでしまうのも事実。  だってやっぱり、好きな人には自分だけを見てもらいたいし、他の女の子と居る光景なんて見たくないから。 「秀星先輩って、好きな人いないのかな?」 「いないでしょ。いないから女を取っ替え引っ替えしてるんじゃん?」 「本気にはならないって事か」 「だろうね」 「それに先輩は相手が寄ってくるからオッケーしてるだけなんだよね」 「そうそう、きっと断るのが面倒なんじゃない?」 「そうだよね、モテる人は大変だよね」  そんな会話を交わしながら、支度を終えた私たちは教室を後にした。  私たちとは何の接点も無い、イケメンの先輩。  それはこれからも変わらないと思っていたのだけど、この日の夜、私は母親からとんでもない話を聞かされる事になる。 「――蘭、実はね……お母さん、近々再婚したいなって思ってるの」 「再婚!? そういえば前々から良い人がいるって言ってたよね。その人と?」 「そうなの。彼、仕事で暫く関西の方に行っていたんだけどようやくこっちに帰って来れて、そろそろ落ち着きたいねって話してて……蘭的にはどうかなって……」  母は私がまだ物心つく前に離婚をして以降女手一つで育ててくれた。  そんな母に、数年前から良い人がいる事は知っていたからそれについては驚かないけれど、いよいよ再婚となると、色々変わってくるので少し不安もある。  それに、忘れていたけど相手も子供がいるとか聞いた事があった事を思い出す。 「そういえば、相手の人にも子供いるんだよね? その人っていくつの人なの?」  詳しく聞いていなかったけれど、再婚したら家族になる訳で、今のうちにどんな人なのか知りたいと思った私が相手の子供というのが何歳で、どんな人なのかを聞いてみると、 「――八汐 秀星くんって言って、蘭よりも二つ上の男の子よ」 「えぇ!? 八汐 秀星……!?」  思いもよらぬ人物の名前が出てきたのだった。
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