はじまり

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「あら、蘭、秀星くんを知ってるの?」 「だって、同じ学校……」 「ああ! そういえばそうだわ。秀星くんも蘭と同じ高校って聞いていたのすっかり忘れてたわ」 「そ、そういう重要な事はもっと早く言ってよ……」  母から衝撃的な話を聞かされて戸惑う私。 (嘘でしょ? 秀星先輩が、義理のお兄ちゃんになるの?)  こんな事があるのだろうか? まさか、憧れの人が義理の家族に……兄妹になるなんて。 (え、ちょっと待って、もし義理の兄妹になったのを周りに知られたら……絶対注目されるやつじゃない? 秀星先輩人気だから、絶対女子から睨まれそう……)  しかも、母が再婚したら私の苗字変わる訳で、『八汐』なんて少し珍しいから義理の兄妹になった事を隠していてもすぐにバレてしまいそう。 (……どうなっちゃうんだろう……私の高校生活……)  そんな不安を胸に抱いた私をよそに、話を聞いてから一週間後、顔合わせという名の食事会をする事になった。 「初めまして蘭さん。お母さんとお付き合いさせていただいている八汐 孝浩(たかひろ)です。よろしく。それと、こっちは息子の秀星です」  父親になる予定で秀星先輩のお父さんの孝浩さんが挨拶をしてくれる。  黒髪短髪で眼鏡を掛けている、温厚で優しそうな人。  明るめの茶髪でピアスをいくつか付けている少し派手めの秀星先輩とはあまり似ていないような気もするけど、よく見ると面影はある。 「初めまして、蘭ちゃん。秀星です。父さんから聞いたけど、同じ学校なんだってね。これから兄妹になるんだし、仲良くしようね」 「あ、はい、こちらこそ、よろしくお願いします」  そして、孝浩さんの後に続いて挨拶をしてくれた秀星先輩。  いつも遠くから見ていた憧れの先輩がすぐ目の前にいるなんて緊張で上手く話せないし、視線が合うと恥ずかしくて直視出来ない。  こうして顔合わせまで済ませた後は本当に早くて、母たちの再婚話はあれよあれよと進んでいき、顔合わせからひと月後には籍を入れて、私と母が八汐家に引っ越す形になったのだった。
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