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その夜。
「え……旅行?」
四人で夕御飯を食べていた時、お母さんと孝浩さんが来週末に旅行に行くと言い出した。
「来週は月曜日が祝日でしょ? 折角の三連休だし、新婚旅行っていうのもあれだから、せめて近場に旅行でもと思ってね」
「初めはみんなでと思ったんだけど、秀星も蘭ちゃんも親と一緒に旅行っていう年齢でもないかなと思ってね……」
孝浩さんは四人で旅行にと思っていたらしいのだけど、確かに私も先輩も高校生だし、家族で旅行……なんて年齢でも無いからそれは構わないけど、二人が旅行に出掛けるという事はその間家には私と先輩の二人だけという事になる訳で……。
「俺らの事は気にしないで、二人で楽しんで来てよ。それで、どこに行くの?」
「沖縄よ」
「へぇ〜沖縄かぁ、修学旅行で行ったきりだなぁ。蘭は行った事ある? 沖縄」
「へ!?」
突然話を振られて驚いた私は間抜けな声を出してしまう。
「沖縄だよ、行った事ある? 父さんたち、沖縄行くんだってさ」
「沖縄ですか。私は無いです。良いなぁ沖縄! お土産買って来てね」
両親がどこに旅行に行くとか、正直今はどうでも良くて、私は先輩と二人きりになってしまう日が既に迫っている事に焦りを感じていた。
そして翌日、学校に行った私は緊張していた。
引越しを終えたタイミングで名字を変更する事にしていたからだ。
両親も先生も、学校生活で使う名字に関しては私の好きな方で良いと言ってくれたのだけど、隠していて途中でバレてしまうくらいなら変えた方が良いかなと思い変える事に決めた。
別に親が再婚した事についてどう思われても構わないのだけど、私が心配しているのは秀星先輩の妹になったという事。
八汐という名字の人は先輩以外にいないからすぐに分かってしまうだろう事は容易に想像がついたので、私の心臓はドキドキしっぱなしだった。
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