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はじまり
「あ、秀星先輩、また別の女の人連れて歩いてる」
「あれ、隣のクラスの仁科さんじゃない?」
「本当だ、確か仁科さんって別の学校に彼氏いなかったっけ?」
「彼氏いるのに彼氏以外の男と歩くとか、よくやるわぁ」
「しかも相手はあの秀星先輩だもんね。私なら嫌だな、あんな女に見境無い人」
「まあね、けど秀星先輩ってルックス良いし、ちょっと俺様なとこあるけどそこが良いって言うよ。噂では、エッチも上手いとか」
「うーん、でも私は無理かな。どんなに格好良くても浮気性はやだ。ねぇ、蘭はどう思う?」
「え? 何が?」
放課後、仲良しの友人、三上 真由子と佐藤 可奈が窓の外を見ながら話している横で帰り支度を整えていると、突然話を振られて思わず問い返す。
「だから、秀星先輩よ」
「格好良いけど、やっぱり彼氏にはしたくないかって事」
「あー、秀星先輩ね……うーん、どうだろ……そもそも秀星先輩と付き合える訳無いでしょ。接点も無いし」
「まあ、そうだけど。もしもの話よ」
「そうそう、もしも付き合えるとしたらって事」
二人の会話に出てきたのは三年の八汐 秀星先輩で、彼は学年一格好良いと評判のイケメン男子。
だけど、ちょっと俺様気質なところがあったり、ガラの悪い人たちとつるんでいたり、来る者拒まず去る者追わず精神なのか常に女を取っ替え引っ替えしているところが少しマイナスなようで、彼を支持する人としない人で大きく意見が別れていた。
そんな中……私は前者だったりする。
秀星先輩は俺様気質で女に見境無くて、授業もサボったり、煙草を吸ってたり、ガラの悪い人たちとつるんでいたりと不良っぽいところもあるいわば治安悪い系男子……ではあるけど、それでも、そんな先輩にも優しいところがあるからだ。
それを知ったのは数カ月前、たまたま同じ電車に乗った時――杖をついたお年寄りに席を譲っているのを見た事や、別の日には駅の階段で転んだ子供に声を掛けて介抱していたのを見た事で、この人、根は優しい人なんだろうなって思った。
それからだ、秀星先輩を密かに目で追うようになっていったのは。
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