パニックの裏

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 焦っている顔も、可愛かったなぁ。  バスを見送りながら、わたしは長く息をついた。本当はもう少しあの顔を堪能していたかったし、もっと言えば写真も撮りたかった。でも、今日は勝負の日だもんね、仕方ないもんね。  でも、受験票をわざと鞄から擦って落としたように装うなんてね。私の頭は、機転が回る方で安心したわ。  あの子の可愛い顔が見れなくなった変わりに、スマホに保存してある画像を見て癒されよう。千をも超える写真は、あの子の顔しか映っていない。どれも私を向いていなくて、でも確かに存在している。  写真を撮る許可はない。だって、私達にそんなものはいらないの。愛し合っているから。  私がもっと積極的だったら、もしかしたら恋人になれたのかもしれないわ。残念。私は他人のフリで、お淑やかのお姉様を演じてしか、近づく事ができないの。 「もどかしいわ……」 こちらを見ていない、あの子の笑顔をスマホの画像越しになぞった。
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