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「シオンは自力で呪いの条件を探した。それが、ユリ・サンドロテに近づいた理由だ。元々サンドロテ伯爵家には呪いに関する黒い噂があり、シオンは彼女に目をつけた」
それ以上話を聞くのが怖かった。
同時に、聞かなければならないとも思った。
「ユリ嬢から君に呪いをかけ、条件が『シオンの死』と知ってから、シオンは……汚名を被って孤独に死んだ。浮気も、婚約破棄も、追放も……君や家族に迷惑をかけないための選択だった」
「どうして……そんな」
「君に冷たく当たったのは、自分のことは忘れて幸せになってほしいという想いだった。君がこのことを知れば、罪悪感に苛まれて生きていくだろうと」
ライラックが涙を流す姿を、スズランは初めて見た。
それが全て事実であることを物語っている。
「あいつ、最初は俺にも黙って死のうとしたんだ。俺が無理矢理吐かせたけど」
「私……何も知らなくて……」
「徹底的に隠したからな。本当は俺も、黙っておくべきだったのに……君の姿を見て、話しても大丈夫だと思ったんた。あいつも少しは報われるかなって」
ライラックは墓に触れる。
「君の幸せが自分の幸せだと言っていた。本当にあいつは君を心から愛していたよ」
ライラックは再度、同じ質問をする。
「なあ、君は今幸せか?」
スズランは何も知らなかった自分が恥ずかくなる。
悪だと非難され、孤独に死んでいったシオンを思うと、胸が張り裂けそうな想いだった。
しかし……そうならないために、シオンはこの選択をしたのだと。
「シオン様……私、今とても幸せです。これも全て、シオン様が呪いを解いてくださったおかげです」
スズランは涙を流しながら笑い、想いを伝える。
(私も……シオン様を愛していました)
胸の奥がじわりと温かくなり、スズランはシオンと過ごした日々を思い返した。
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