173人が本棚に入れています
本棚に追加
「やはりみなさんが仰っていた通りです。シオン様はとても優しくて、温かい人ですね」
「どこを見てそう思ったんだ」
どちらかといえば冷たく当たっているつもりだったが、スズランは気づいていないようだ。
「シオン様は、私が初めてシオン様に挨拶をした時を覚えていますか? あの時は恥ずかしながら、緊張で頭が真っ白になってしまい上手く体が動きませんでした。そんな私をシオン様は咎めず、見過ごしてくださいました」
指摘するほどのことでもなく、何も言わずにいただけだが、その行動がスズランにとって優しいに繋がったようだ。
「この婚約が嫌ではないのかと、私の意思を確認して下った気遣いも、とてもお優しい方なのだなと思いました」
どれもこれもスズランの思い違いで、自分の良いように解釈する人であることがわかった。
しかしシオンは不思議と不快ではなく、このような考え方の人もいるのだと新たな発見だった。
最初は少しの興味から。共に過ごしていくうちに、いつしか互いにとってかけがえのない存在になっていった。
「これを見つけた時、シオン様に似合うだろうなと思ったんです」
学園への入学が迫っていたある日、スズランはシオンに青いピアスの贈り物をした。
恥ずかしそうに頬を赤く染める姿は愛おしく、自分を想いながら選んでくれたのだと思うと、嬉しさのあまりシオンの顔が綻ぶ。
ピアスをつけて喜ぶシオンを見て、スズランもまた嬉しそうに微笑んだ。
「君が私の婚約者で良かった」
この時シオンはスズランに向け、初めて本音を明かした。
愛を知らずに育ったシオンにその感情を教えたのは、他でもないスズランだった。
三年間の学園生活が終われば、二人は結婚することが決まっている。
シオンは早く三年が経てばいいのにと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!