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その日からスズランとシオンの関係性が大きく変わった。
今までは学園で一緒に過ごすこともあったが、二人は一切関わらなくなり、シオンに至っては他の令嬢と仲良くしていて、周りはすぐ異変に気づいた。
「君は本当に可愛いんだな」
「ふふ、シオン様は褒めるのがお上手ですのね。けれどシオン様の婚約者に申し訳ないですわ」
「気にするな。あれは所詮、形だけだ」
まるで恋人のような二人。
相手はユリ・サンドロテ伯爵令嬢で、シオンの言葉通り可憐な女性だった。
婚約者がいるはずのシオンが堂々と浮気をしているもいう噂は、瞬く間に学園内に広まった。
スズランと学園で鉢合わせれば、チッと舌打ちをしながら睨みつけ、スズランの心はすり減っていった。
「絶対におかしい。何か裏があると思わないか?」
周りには同情の目を向けられ、どこか気まずく学園で俯きながら過ごす日々を送っているスズランに、とある令息が声をかけた。
名はライラック・イノセント。
公爵家の令息であるライラックはシオンと幼少期からの仲で、一番の友人といっても過言ではない。
スズランも自然とライラックとの関わりが増え、学園内でも会えば言葉を交わす友人となっていた。
「ライラック様……」
「突然シオンの様子が変わって、俺を避けるようになったんだ。そしたら、君に対しても酷い扱いをしてると知ったよ。シオンが君を冷たくあしらうなんてあり得ないのに」
戸惑いの色を見せるライラックに、スズランは本当のことを話すべきかと悩む。
しかし呪いについて話せば、ライラックにも避けられるかもしれない。
そう思うと怖くなり、真実は明かせなかった。
「全て私が悪いのです。私が……シオン様の、足を引っ張るようなことをしたのです」
「そんなはずない。万一本当だとして、シオンなら君を助けようとするはずだ。だってシオンは君のこと……」
「まあっ、シオン様ったら」
その時、近くでシオンの名を呼ぶ女性の声がした。
スズランとライラックは同じタイミングで顔を上げ、声のした方に視線を向ける。
そこにはユリと、彼女の肩をそっと抱いているシオンの姿があった。
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