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「あいつ……おい! シオン!」
我慢できなくなったライラックが怒りを含んだ声を上げ、シオンの目の前に立つ。
「ライラック。突然大きな声を出しては、ユリが驚くだろう」
「いったいどういうつもりだ! お前の婚約者はユリ嬢か? 違うだろ⁉︎」
怒るライラックに対して顔を顰めたシオンが、スズランの存在に初めて気づく。
「ああ、そこにいたのか。君はユリに嫉妬して、ライラックに泣きついたのだろう」
「なっ……お前、いい加減にしろよ!」
「私の婚約者がこれほど醜い令嬢だったとはな。心底残念だ。ライラックも醜い彼女の手中に収まったようだし、君たち二人は面倒だ」
シオンの視線がいつになく冷たく、スズランは上手く呼吸ができなくなる。
「シオン様、早く行きましょう」
「ああ、すまないユリ。行こう」
シオンの姿が見えなくなったところで、スズランはその場に崩れた。
「うっ……」
何もかも呪われた自分が悪く、シオンは悪くない。
そう何度も言い聞かせるが、胸の苦しみが和らぐことはない。
「やっぱりもう一度シオンと話してくる」
「もう、良いのですライラック様。原因は全て私にあるのです」
「そんなわけないだろ! 君は何も悪くない!」
「いいえ、心当たりがあるのです。だからどうかシオン様を責めないでください」
今回の件がきっかけで、シオンとライラックが不仲になっては、罪悪感で耐えられそうにない。
自分は平気だと伝えるため、スズランは無理矢理笑みを浮かべた。
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