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第5話
翌日。現実世界、大学で。
色素の薄い髪の中性的な人物が、門の前にいた。
??「まだ、来ないかな.....」
ハスキーな声質からして、男性のもののようだ。
その男性は下を見ながら門の前で座っている。
彼は誰かと待ち合わせをしているのだろうか。
??「おまたせ、陽くん」
陽と呼ばれた彼が見上げると、長髪の女性が側に立っていた。
陽「おはよう、まゆさん」
陽はまゆと呼んだ、長髪の女性に微笑みを返す。
まゆ「陽くん、昨日は凄かったね。まさか作曲家サークルの大会で1位を取っちゃうなんて!」
陽は立ち上がり、まゆと横並んで歩き出す。
実は、陽とまゆが通う大学は文化祭の真っ只中だった。
陽「たまたまだよ…...あの曲が僕の全力って訳じゃないし」
称賛するまゆの言葉を、陽は弱々しい声で切り捨てていく。
まゆ「そんな事言って、本当は嬉しいんでしょ?」
陽「うるさいなぁ.....置いてくよ」
まゆ「陽くんって思春期真っ只中の中学生みたい。
もしかして、拗ねらせてる?」
まゆのからかうような問いには無視し、陽は文化祭の喧騒に溶けていった。
周りは声も視線もうるさかった。
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