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......と仕事前は思っていたのだ。しかし、現在、俺は指定されたカフェに来ていた。目の前には、朝に声をかけてきた男がいる。
「大切な人との大切な時間を大事に」がコンセプトのカフェらしく、個室の部屋が多くあった。ここに来た理由は何のこっちゃない。仕事で失敗して上司に激しく叱責されたからだ。壺でも売るような悪いやつなら、少しくらい憂さ晴らしに、こちらから反撃したって問題はないだろう。さあ、来い。「最近、お仕事順調ですか」だろ!それか、「ここだけの話なんですが……」とかだろ!
身構えていると、相手はすぐに話し始めた。
「まずは、来てくれて、ありがとう。そこで、朝も聞いたんだけど、ヒーローになる気はない?」
「はぁ?!」
身構えていただけに、有り余った力が声量になって出てしまった。思わず、意味もなく口を押さえるが、相手は動じることなく、さらに詰め寄ってきた。
「で、どうなの?なるの?ならないの?」
なるの?ならないの?と言われても、全く意味が分からない。しかし、ヒーローというと俺たち地球に住む人間にとって、思い当たるのが一つだけある。
「ヒーローって、まさかバケモンヒーロー?」
「そうそれ」
単純にまとまった回答。いや、「そうそれ」じゃない。余計に意味がわからない。
「なんで、俺が?バケモンヒーローなら、既にいるじゃないか。それにあんたは一体誰なんだい」
「あぁ、僕レッド」
「レッド?!レッドってあの、バケモンヒーローのレッドか!?」
「そうだけど」
ますます混乱してきた。チャラいやつに声かけられたと思ったら、今世界を救うバケモンヒーローで、俺がそれに誘われている?!だと……俺は確認のために聞いた。
「俺をバケモンヒーローの仲間に加えたいってことでいいんですかね」
「ああ、違う。俺と代わって欲しいの。」
レッドは、大それた話の割に淡々とした様子だった。メニュー表を眺めながら、パフェの追加注文を検討している。これが、バケモンとの対峙で培った精神力か。いや、そんなことを考えている場合ではない。
「代わる?!なんでですか?俺には無理だよ!あんたたちに、地球の未来がかかってるんだぞ!お願いだ!もうちょっと、頑張ってくれよ!」
すると、レッドは、今度は俺の目を見て話し始めた。
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