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お出迎えの準備
その店主はお気に入りのハーブティーを飲みながら思考する。
ドライフラワーと生花に囲まれながらアンティークのテーブルとイスがセットでいくつか配置されている。出窓から穏やかな風が入り、様々な花の香りが立ちこめる。カウンターの中にある棚にはアンティークのポットやカップ&ソーサーが綺麗に並べられている。
カウンターには沢山のクッキーが入ったクッキージャーや蓋付きのケーキスタンドには、マフィンやスコーンやシフォンケーキが並び、その横の小さなショーケースにはケーキやショコラが並んでいる。
ここは真っ黒な屋根の小さな喫茶店。店主が淹れてくれるハーブティーを飲むと、悩みが消えて体が軽くなるとかならないとか……。
「さて、今日のお客様はこの方にしましょう。ビビ、この方をお連れしてください」
「にゃー!」
店主は黒猫のビビに今日のお客様を連れてくるようにと水晶に映ったある女性を見せた。ビビはその女性を確認して、すぅっと喫茶店から消えていった。
「今日も素敵な一日になりそうです」
すっと立ち上がり、開店準備を始める店主。その姿は黒い燕尾服に、胸元には白いハンカチーフ、右ポケットにはシルバーの懐中時計。銀髪のロングヘアを黒いリボンで束ねており、風になびく姿はそれはもう美しく、右目には何かの紋様が描かれた黒い眼帯をしている。
「さて、今日はタイム、レモングラス、ラベンダー、ローズヒップ、他にはこの辺りもでしょうか」
お客様へお出しするハーブの調合を始める店主。
ガラスポットに入ったドライハーブやベランダにあるフレッシュハーブやドライフルーツにフレッシュフルーツなどの組み合わせにより、香りも効能も変わってくるハーブティーはとても奥深く、店主もお気に入りの組み合わせを日々開発している。
「さて、そろそろいらっしゃる頃でしょうか」
懐中時計を見ながら店主はテーブルへ向い、セッティングを始めた。白いレースが掛かったテーブルの上には、小さなバスケットに入ったフラワーアレンジメントが飾られている。テーブルをセットし終えた頃に扉のベル音が響き渡った。
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