嵐の夜に

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 車を走らせていく内にデイモンは段々と落ち着いて来た。  あの道で自分の車に気が付かない人間はいる筈ない。  つまり、人間は易々と自分に轢かれる筈がないのだ。  だからやはり自分は勘違いしている。  それに、エミリーのあの姿も見間違いに違いない。  仮にエミリーが死んだとして、死因は恐らく絞殺だ。  だが自分がエミリーの家を出てから十分もしない内にまた戻ったのだ。  頃合いを見計らって家に侵入したとしても十分では人を殺せない。  きっとエミリーのいたずらか何かだ。  明日には笑ってネタばらしをしてくれる。  そもそもこんな嵐の日に出掛けた自分が悪い。  大人しく家に帰っていれば良かったんだ。  デイモンはそう思い、安堵のため息を吐いた。  その後、デイモンは何事もなく家に到着した。  顔色が少し悪いと彼の妻に心配されたが、仕事の疲れかなとデイモンは微笑み返す。  次の日、デイモンはいつもより早く起きた。  嵐はいつの間にか止んでいたが、相変わらず怪しい空模様だ。  デイモンは外に出て新聞を買い、隅から隅まで読み漁った。  「独居女性、謎の死」とか「嵐の夜、轢き逃げ事件」とか、そんな感じのタイトルを探す為だ。  どんなに探してもそのような記事はなかったため、それ見たことかとデイモンは口角をあげる。  やはり自分が見たあれはエミリーのいたずらだったし、昨日轢いたあれは人ではなかった。  心配して損したよと呟きながらデイモンは家に帰った。
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