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「うわああああああああ!!!!」
悲鳴をあげながらデイモンは家から飛び出し、車に乗り込んだ。
車の扉を閉めるや否や、すぐさまエンジンをかける。
頭がパニックになっている中、デイモンはただ一心にあそこから離れなければ、と考えていた。
アクセルを全開にして、方向がどこだろうと構わず車を走らせる。
一分たりともあの場にはいたくなかったのだ。
嵐が酷くなる。
郊外だからか、木は多く、嵐に揺らされた枝は絶えずデイモンの視界を邪魔する。
デイモンは必死に、行く手を遮る木々を避けようとハンドルの向きを変えた。
ところが。
向きを変えた矢先に人影らしきものがあった。
それも、車とごく僅かな距離しか離れていない。
デイモンは慌ててブレーキをかけるが、甲高い音と共に強い衝撃が彼を襲う。
車は止まったが、恐らく人は助からないだろう。
直感的に彼はそう感じた。
人を轢いてしまったかもしれないという新たな恐怖が這い上がり、デイモンは冷や汗をびっしょりかいた。
すぐに車を降りて確かめようとしたが、ドアノブに手をかけてデイモンは考え直す。
自分は弁護士で、財産も社会的地位もある。
守るべき大切な家族もいる。
交通事故を起こしたのが世間にばれてしまえばこれらは全て奪われてしまう。
それだけは、あってはならない。
そもそも人を轢いたとは限らないじゃないか。
こんな嵐の夜に出掛ける人などいる筈がない。
きっと、自分の見間違いだろう。
折れた木の枝を引いてしまっただけかもしれない。
デイモンはそう自分に言い聞かせながら再びエンジンをかけ、戦慄く手でハンドルを握り締めた。
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