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道のりの遠さ、革靴での歩きにくさも含めてデイモンがエミリーの家に到着したのは午後となった。
さあどうやってエミリーを驚かせようかとデイモンが思考を巡らせていると、遠くからエンジンの音が聞こえた。
咄嗟に茂みに隠れる。
車がやってきた。
それも、デイモンの車と同じ車種、メルセデス・ベンツE320。
車から降りた男の顔はよく見えなかったが、相当金を持っている様だ。
男が扉を叩くとエミリーはすぐに扉を開け、慣れた様子で男を招き入れた。
デイモンは顔を顰める。
エミリーは他にも男を呼んでいたのだろうか……
自分以外の男と関係を持たないという合意のもとで愛人にした筈だ。
そうか、だからエミリーは自分を怖がらせようとしたのか。
デイモンはふと閃く。
普通に男を呼ぶなら自分と時間が重なる可能性がある。
だから昨日、殺されたと見せかけることによってエミリーは自分を怖がらせ、今日来させない様にした。
そうすれば今日呼ぶ男と自分は鉢合わせにならない。
つまりあのいたずらは自分以外の男を呼ぶためのものだ。
デイモンはそっと窓から中を覗く。
二人の衣服は床一面に散らばっており、エミリーはデイモンに見せたことがないほどの乱れた姿をしていた。
おのれ、よくも騙してくれたな。
ふつふつと湧き上がる怒りを抑えてデイモンは男が帰るまで待つ。
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