魔王様の告白!

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魔王様の告白!

「我は決めたのだ」  魔王の手元。無骨な手には似合わない、ピンクの可愛らしい封筒が握られていた。  部下である俺の顔はつい強張ってしまう。もしや、あの手紙は。 「我は、この雨が上がったら……彼女に想いを告げる」 「魔王様、それは……」 「わかっておる」  彼はゆっくりと首を振った。長い金色の髪が揺れ、同じ色の角が蝋燭の明かりを反射してキラキラと輝いた。  絨毯に、椅子に座ったままの魔王の影が長く伸びている。憂いを帯びた表情で、彼は一つため息をついた。 「これは、許されぬ恋なのだろう。それでも、我は彼女のことを好きになってしまった」 「魔王様……」 「雨が降っている間は、川が増水し、あらゆる物資が届かないことはわかっている。儂が送る手紙も届かんだろう。だから、それまでは辛抱する。しかし、雨期が終わり、この雨が上がり……空に虹がかかったらその時は」  彼はルビーのような瞳で、天井を仰いだ。 「この手紙を、投函しよう。たとえ彼女に他に好きな人がいたとしても、許されない恋だったとしても……我の本当の気持ちだけは、彼女に伝えておきたいのだ。たとえこの想い届かず、朽ち果てることになったとしても」
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