変な客

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 アルバイトを終えて帰路につくのは、決まって夜の二十時過ぎ。  学生用の安アパートばかりがひしめく町は、街灯も少なく、見通しも悪い。  先日も同じ大学へ通う女子生徒が痴漢被害に遭ったから、夜道には重々気を付けるようにと学生課からお達しがあったばかりだ。学生の多いこの町では、若い女性を狙った犯罪は日常的に多いのだという。  ト……ト……ト……。  スニーカーの靴裏が規則的に刻む足音に、不意に不協和音が混じった気がして、肩越しに背後を窺う。  特に人影は見当たらない。気のせいか――  ト……ト……ト……トタ……。   やっぱり、いる!  咄嗟に振り返るも、やはり暗い街並みが広がっているだけだった。今、絶対自分じゃない足音が混じったような気がしたのに。  古い民家の塀やアパートの影等、身を潜める場所はいくらでもある。そのうちどこかから不審者が飛び出してくるような気がして、不安で仕方がなかった。  コンビニでのアルバイトを初めたのは約三ヵ月前。ちょうどその頃から、どうも誰かに付きまとわれているような気がしてならなかった。  心当たりがあるとすれば……あの男だ。  脳裏に浮かんだ人物像を打ち消すように頭を振ると、私は少し急ぎ足で、まるで誰かに追い立てられるように家路を急いだ。
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