片思いの曲がり角

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相葉の言葉に重い重い腰を上げて、砂羽の家へと向かう。 この時間にはきっと砂羽の両親もいるだろうから、家では話なんてとても出来ない。 近くのカフェやファミレスなんかも考えたが、誰の目や耳があるのかも分からない場所で迂闊にできる話ではない。 どこで話そうかとばかり考えていたのは、それ以外のことを考えてしまうとそれだけで心が折れそうだったから。 せっかく背中を押してもらえたんだから、今を逃してしまうと弱虫な俺は告白なんて一生出来ない気がする。 あの相葉が、俺に優しい言葉なんてかけてくれるわけがない。 あの相葉が、俺に自信を与えてくれるわけがない。 あの相葉が、俺を喜ばせる嘘を言うとは考えられない。 だから、ようやく決心ができた。 大丈夫だよって、誰かに背中を押してもらえるのをずっと待っていた。 中学の時に散々心を折られたせいで自信なんて全くないし、前向きに捉えることも難しい。 だから、誰かにそう言って貰えないと前には進めない。 砂羽にLINEを送って、今から2人で話がしたいと連絡すると、ふたつ先の駅前のラブホを指定された。 なかなか1人でうろうろするのは勇気がいる場所ではあったけれど、それ以上に勇気のいることをしようとしていたから、あまり気にもならない。 何度も何度も遠回りしながらその場所に向かうと、ホテルの前で佇む砂羽の横顔が見えて、思わず背中を向けて走り出したい衝動に駆られる。 俺が足を止めて躊躇っていると、砂羽が先に俺の存在に気が付いた。 無言で見つめ合っているだけで、その場にしゃがみ込んで泣きそうになる。 昨日あんなことがあったのに、それよりも会えたことの嬉しさが勝る。 そのことに気が付いて、本当に俺は馬鹿だと思った。 ゆっくりとした足取りで近づくと、砂羽に無言で手首を掴まれてラブホへと入る。 無人の受付のお陰で誰かに見られる心配はなかったけれど、それを知っててここを指定したということは、ここに誰かと来たのかと思うと……それだけで気分が沈んだ。 砂羽に手首を掴まれたまま部屋に入ると、扉が閉まらないうちに砂羽にふわりと抱きしめられる。 トクトクと早いリズムで鼓動する心臓に耳をくっつけていると、先ほど固めたはずの決意が脆くも崩れていく。 離れたくない。 ずっと、傍にいたい。 温かくて、気持ちがよくて、目を閉じたまま広い背中に手を伸ばす。 しばらく無言で抱き合っていると、腕の拘束が少し弱まる。 「ヒナ。」 「あの、砂羽……。」 ――今、言わなきゃ……。 そう思って見上げると、哀しそうな双眼にぶつかった。 「ごめん。」 「え?」 「ヒナがいるなんて思わなくて……。」 そう言って今度は苦しいくらいに抱きしめられて、砂羽の香りに包まれる。 それだけでほかほかと心が気持ちよくて、涙がでそうなほど幸せで、その幸せが逃げていかないように力を込めて抱きしめ返した。 「俺も、邪魔しちゃったし……。」 泣かないように下手な笑みを浮かべながらそう告げると、顎を掴まれて視線を合わせられる。 急になんだと思いながら見上げると、掠めるだけのキスをされた。 「邪魔だなんて、思うわけないじゃん。」 いつもの柔らかい顔をくしゃくしゃに崩した顔で、今にも泣きだしそうな声で俺をじっと見つめる砂羽の表情に、胸の奥がツキンと痛む。 もう一度抱きしめられて、先ほどよりもゆっくりと唇を塞がれる。 完全にタイミングを逃してしまったと思ったけれど、そのことが頭を掠めるのと同時に、砂羽のモノがすっかり自己主張が激しくなっていることにも気が付いてしまった。 まだ軽いキスしか交わしていないのに、俺のナカに挿れている時のように欲望が膨れ上がっている。 俺のことを抱きたいと思っているんだと思うと、心が温かいもので満たされていく。 いろいろ確かめたいと思っていたのに、好きだって告白しようと思っていたのに…… 何度も深いキスを受け入れているうちに、その決意は欲望の渦に埋もれてしまった。 「砂羽の……も、硬い。」 下半身を擦り付けられるようにきつく抱きしめられ、忙しなくキスをされ、舌が抜けそうな程きつく吸われ、気が焦って歯がぶつかる。 そんな痛いくらいの口づけに、口蓋までじんと痺れた。 「ヒナ、ごめん。ちょっと今日余裕ないかも……。」 気がつけばまだ靴も脱がないようなところで抱き合っていたことに気が付いて、よっぽど余裕がなかったんだと思うと嬉しくて。 昨日のことなんてまるでなかったかのようにはしゃぎながら、身体を絡ませ転ぶようにベッドに雪崩れ込む。 「ゆっくり楽しむのは2回目にして、早く挿れたい。」 耳元でそんなことまで言われてしまったら、こくこくと真っ赤な顔で頷くしかない。 ボタンをひとつも乱されぬまますぐにベルトを引き抜かれ、ズボンを膝まで一気にずらされる。 ムードなんてものは何もなかったけれど、痛そうな程勃ちあがった性器を目の前に晒されれば、それだけでイってしまいそうなほどの興奮を覚えた。 早く早くと急かされるまま尻を突き出すように砂羽に向けると、双丘に砂羽の昂りを擦り付けられた。 その熱に軽く眩暈を覚えながらも、まだ少しも解されていないのに…… 期待に震えたナカがひきつく。 両手で尻を軽く揉まれてから、すぐに後孔にローションが垂らされる。 いきなりの行為に身体は少しも解れていないのに、心は既に絶頂を迎えたかのように震えていて 前戯なんて全部すっ飛ばしていいから、早くナカを貫いてほしいとさえ思う。 余裕のない顔で抱かれるのが嬉しくて、異物感に下唇を噛んでいると…… 砂羽に腕を引かれてキスをせがまれた。 唇だけじゃなく、背中や尻にまでもキスを落としながら、砂羽の指がゆっくりとナカに入ってくる。 性急にいいとこを探り当てると、焦らす気はまったくないからそこを丹念に擦りあげられて、一気に快感の絶頂に到達する。 声を抑えることもなく、感じるまま腰を振り、獣ようにベッドを揺らす。 そんな俺の姿に欲情して、赤い舌でちろりと唇を舐める姿に、赤くなっていた頬がさらに火照り、胸が弾む。 「あ、砂羽……。」 「も、いい?」 頷く前に両脚を砂羽の肩にのせられると、正常位で一気に奥まで貫かれる。 狭い場所を抉るように進む硬さに馴染む時間も与えられず、上手く息を吸うことも許されない行為はひどく苦しいのに、砂羽にされているというだけで蕩けそうなほどの快感を生み出す。 砂羽の汗ばんだ髪を指で拭って、快感で歪んだ顔を目の奥に焼き付ける。 「砂羽……超、かっこいい。」 そんなことを口走ると、砂羽が壊れたように一層激しく腰を振る。 後頭部の奥の方に熱が溜まるような感覚と、ふわふわと身体が浮くような感覚が混ざる。 砂羽の性器を搾り取るような締め付けとは裏腹に、俺のモノはトロトロと先走りを溢すだけで、一向に反応はしない。 雄の象徴がその意味をなさず、完全に雌の身体のように砂羽の脈だつモノを受け入れている。 イく時の一瞬の快感は生まないものの、何度も何度も押し寄せてくる快感に頭が白濁する。 終わることのない快感の波に思い切り喘いでいると、砂羽のモノが膨張して一気に弾ける。 どろりと腰の奥に熱い迸りを感じて、掠れた視界の中で砂羽が汗を垂らしながら息をする姿がうっすらと見える。 そのまますぐに抜こうとする砂羽の腕を掴んでその唇を奪い、粘膜を抉るように口内を掻き混ぜる。 息が整わないままの激しいキスに砂羽は苦しそうだったけれど、力を失くし始めていたモノが再び硬度を上げていくのに気が付いた。 「ヒ……ヒナ?」 「このまま、もう一回して?」 抱きしめながらそう強請ると、砂羽は困ったように眉を八の字に曲げながら優しいキスをくれた。 「今日は俺ばっかだから、ヒナのこと気持ちよくしたい。」 そう言って、俺のボタンを丁寧に外そうとする長い指を掴む。 一気に絶頂まで上り詰めたのに、優しい愛撫は逆に苦しい。 もっと痛いくらいに砂羽を感じたくて、結合部に手を伸ばす。 根元まで銜えこんだ砂羽のを軽く揺らすと、ナカが痺れるように蠢きだす。 その振動で先ほどと同じように硬度を取り戻した砂羽の性器が愛おしくて、自分から上下に腰を振ると砂羽の汗が頬に落ちてきた。 「……それ、やばい。」 欲望を前面にだした顔でそう言われ、頭の中はぐちゃぐちゃで、身体が熱くて仕方がない。 「砂羽の顔見てるだけでイっちゃいそうだから、もっとよく見せて?」 苦しそうな顔で俺を見つめる砂羽の頬に手を伸ばすと、手首を強く掴まれてベッドに沈まされる。 「あー、もう……煽るなっつーの!」 苛立ったようにそう言うと、抱きかかえるように背中を持ち上げられる。 急な浮遊感に戸惑いながら砂羽の首に腕を回すと、下から思い切り突き上げられた。 ひいひいと泣きながら上下に揺すられ、汗で滑る背中に必死にしがみついた。
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