青い蜜柑

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三日後。 北町奉行所の門が大きく開き、一般人までも中へ入れると聞きつけた町人たちが我先にと、中へと入っていった。 「へー、これがおしらすか」 「ここで何をするんだ?」 「お前ら知らねえで入ってきたのか?今からお裁きが下るんだ」 「悪人をお奉行様がさばいてくださるのさ」 「おほん、静かに、よいか、今日はお奉行様のお計らいでこうして皆が入れたが、絶対声を出さないこと、物を投げないこと、黙って聞かなければ追い出すからな、よいか?」 うん、うん、とうなずく人たちです。 「おー、すげー人たちだな」 「ねえ、新さん、俺ここにいていいの?新之助は向こうだろ?」 新之助は捕まったからな、この人に捕まりましたって言わなきゃいけねえから、俺たちはここから見てような。 うん。 「私もここにいてよろしいのでしょうか?」というのは新之助の叔父だ、これから、弟と姪がなぜ死んだか真相がわかるという。半信半疑でその様子を、ふすまの陰からのぞくのであった。 白い砂砂利の上に広げられた茣蓙の上には新之助と兄、進と母親が座った。 そして。 「すげー人」「何で見世物かよ!」 「黙って座れ!」 縄で腕をまかれ、つながって出てきた男たちが転がりながらやっと座っている。 「北町奉行北条左門様、ごしゅつざにございます!」 ふすまが開きお奉行様が出てくると、数人があとから出てきて、後ろに座った。 「本日の白洲、水戸藩次席家老、佐伯様、寺社定奉行、鹿島様、そして勘定奉行、島田様がお越しになられておる。このお三方は、そこにいる者たちから名前が上がり、その真偽を上から正せとの書状を持ち本日来ていただき開くものである」 手紙のようなものを広げ、中から出した書状を見せるお奉行様。 「兄ちゃんあれは何?」 「お殿様が、お奉行様に、代わりを務めなさいという書状だよ」 とお母さんが説明してくれた。 「それでは、まずは、放火についての審議から」 証拠を出せとの言い分は、お奉行様の後ろにいる、お武家様たちの部下だからというものぐさに、お奉行様が出してきたのは、彼らの手形、そしてそれを調べたのは偉い人らしい。でもその人は俺が一度会ったことにある、大岡様の父上だったんだ。そしてもう一人。 「今や老中とおなりになった一橋様にはご足労いただき、審議は正当なものとされました、皆様よろしいでしょうか?」 誰一人反論できるものはいませんでした。 一橋様は無罪です。 だって、ここにいるお方は名前を使われただけなんだもん。 「では引き続き、放火に生じ、子供をさらった罪にて、これも同等、着物に着いたすすと、手形が証拠となり、ここにいる、上州屋、次男新之助の証言と一致、これもまた審議は明白、皆様よろしいでしょうか?」 誰もが声を出しません。 「反論がないようですので、この者たちに裁きを申し付ける」 彼らは火をつけたということで火破りの刑に処されることになりました。 ですが、つれていかれるときに騒ぎ出したのです、彼らに指示したものがいると。 それは奉行の後ろにいる人の息子。人殺し、辻斬りの犯人だというのです。 そして俺たちに向かってそいつらはこう言い放ったのです。 「お前らも生き残ったんだ、辻斬りに殺されねえようにな」 「まったく、生きてりゃ師範代の嫁の弟だったのによー!」 え? 「いま、なんていったー!」 「進!」 「兄ちゃん!」 「まて!」 お奉行様はその一行を止めました。 「今の話はどういうことだ?死ぬのが決まったから全部話す気になったとかぬかすか?」 「当たり前ですよ、俺たちだけが死んで、そこにいるのといねえとなんで残るんだよ」 「そうだ、そうだ、俺らはそいつらに頼まれただけだ、俺たちだけが殺されるなんてまっぴらだ!」 「と言っておりますが」と後ろを見た。 「さあ、何のことやら」 奉行は男どもを座らせろと、何もないところへと座らせました。 そして一人の男に、聞きます。 「師範代といったな、それはどこの師範だ?」 え?いや。 馬鹿がといったのがいます。 「今言ったもの、答えろ」 「はー、水戸藩の深山っていうやつですよ」 「水戸。佐伯様ご存じですか?」 「……」 「ご存じらしい、北条、私はこれまでだ、失礼する」と立ち上がったのは島田様。 「わたくしも、名を使われるのにも限度がある、これで」と腰を上げた鹿島様。 でも、その人の関係者だよね。 その時、パチンと音がした。 横を見た、扇をたたいたのは新さんだ。
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