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「しばらくおまちくださいますか」
「なぜだ?今水戸といったではないか?」
「私も関係はない、のう一橋殿、勘定方がここにいても何もではしまい」
「はー、勘定方と言われますが、今はあなた様より私のほうが上の立場、わかっておりませんね、下総の柴田、彼に勘定方の情報を流していたのはあなたでは?島田殿?」
「そのような!」
「大岡殿、これはこちらで引き取らせても?」
「ええ、十二分に搾り取ってください、庶民の税金で、でっぷりと太った体に着いた金を」
「ひっとらえろ!」
「はー?一橋―おぬし、私を陥れたかー!」
「さて、何のことやら」
バタバタと入ってきた人が屋敷上段へ行き、その人をとらえ引きずっていく。
覚えていろと怒鳴りながら。
「さて、鹿島様、なぜあなたのお名前が挙がったのか。ここで話しても?」
「わ、私は何も」
「ではこの方に出ていただきましょうかね」
「元水戸藩主、深山信山はいられ」
そこには、大河の師範が出てきた。
「深山」と声に出したのは佐伯様。
「おやご存じで、深山、一つ聞く、おぬしに跡継ぎがなく、親戚と言って近づいてきたのはここにいるもので相違ないか?」
「ものだと!」
「はい、相違ございません、私は天涯孤独、水戸藩を脱藩したのも、そちらに追わします、佐伯様のおそばに使うことができなくなったためにございます」
「では、佐伯様の息子、右近様を次の師範にするというのは?」
「はい、佐伯様への私のわびにございます」
「だがその息子はその恩義に報いるどころか、一番の親友だったものを殺した」
え?
黙って目を閉じ聞いている佐伯様。
「そのこと、知っているな」
「・・・・はい」
「ではそのものをここへ」
「佐伯右近をここへ!」
そこには、大河の兄の親友だった佐伯様の姿。そして、数人の男が出てきた。
「あー!」
「あなたは」
驚く兄弟。
知っている顔がそこに座ったからだ。それだけじゃない、ぞろぞろと来た男たちは、新さんを狙ったものたちだ。生きていたの?
「さて、まずは鹿島様にお聞きしなければなりません、彼らはなぜか、水戸藩、それもわざとわかるように六つ葵の門をわざと隠していた、だが調べると、この門は普段使われることはない、水戸は三つ葉葵を使っておられる、それはここにらっしゃる佐伯様からお聞きした」
「え?は?」
「まったく、やり過ぎましたね、こちらも大目付の出るところとなろうとは、まったく、将軍の命を取ろうとした罪、ここで死罪を言い渡す!」
「待て、待て、どうしてそうなる!それに私は寺社奉行だぞ、ここでなど!」
「ここでじゃなければよろしいのか?」
「そうみたいですね」
「ちっ!一橋お前なんかに」
「まあそうでしょうな、ではもうお一方に登場していただきますか」
後ろが開き出てきたのは。
「水野様!」
俺たちは驚いた、兄ちゃんはもっと驚いていた。
「水野殿、お願いできますでしょうか?」
「では鹿島殿、今を持って寺社奉行の座はく奪いたします、審議はこのまま続けてください」
「はあ?!」
「ではこのまま続けます、鹿島殿、先にこの青年お話を聞かねばあなたにはたどり着けませんでした、さて、右近、おぬしにもう一度問うが構わぬか?」
はいと弱弱しい声がした。
「私は帰る!」
「待ちなされ、ここには最初からあなたのことを見ていらっしゃるお方がいるのですぞ」
「は?誰だと申すのだ?」
「申しても?」
「水野―!」
「そのいいよう、御お方の御前でそれを言うか!ひかえー!」
え?とこっちを見た。
「え?」
「こちらにおわすお方は、将軍、吉宗公にあらされるぞ、頭が高い!」
「新さんが将軍様?」
「名前だけさ、いいの、いいの、これからも新さんで頼むよー」
ひー!
と腰を抜かす人、彼は棒のようなもので抑えられちゃった。
裏であったのは大河にそのあと聞いたけど、これからは、俺たちは泣きながら話を聞いたんだ、悔しくて、ただ悔しくて。
「すべてはわたくしの身勝手、父には何の関係もございません」
「だが親である。子供のしたことを責めるわけでもなく、消しにかかった。自分の地位、身を大事にしたいがために行った親のエゴ、あなただけが背負うものではないのですよ」
「それでも、私は、両親の目を自分に向けたかっただけなのです、ただ事が大きくなり引くに引けなくなってしまい、だれにも相談できず、今に至ります」
「なぜ相談できなかったのですか?死んだ勇士郎様はあなたの親友だったはず」
「俺、結婚するんだ」
そういったアイツの笑顔を奪ったのは俺、この世にいてはいけないのは俺の方なのです。
すると佐伯様は俺たちのほうに体を向けた。
「すみませんでした、あなたたちの父と姉上の命奪ったのは私です、申し訳ありませんでした!」
「なぜですか?なぜ姉は辱めを受けて自害をしたのでしょう?なぜあなたは、そこまで親友を陥れたのですか?」
兄は泣きながら聞きました。
「私の嫉妬です、私は母親を知りません、ミスの後ろにいる声だけの女、そして父という男は、別に家族がいる。いつも一人の私は彼がうらやましかった。笑いが絶えない彼をただうらやましくて、そんなとき私はある人を傷つけてしまった、その人は私のそばで、私の実の世話をしてくれる人だったのに、父はなぜか、彼をこの世界から消してしまった。私にはもう誰もいないとその時思ってしまった、そして、私の後ろには塵一つ残っていない道が広がっていて、そこには誰もいない、私が死ぬまで、そこには誰もいないのだと思った。結婚するといったアイツだけ幸せにしてなる者かとどこかで思ってしまったのです。すべては私がしたこと、ここに私が生きていていい場所などないのです、ここに呼んでいただきありがとう存じます、そして皆様には人殺しの末路をこんな無様な姿を見せ、申し訳ございません」と頭を深々と下げたのです。
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