青い蜜柑

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「お前、これをどこで!」 「下総の屋敷、昨日火事のあったお屋敷です」 「おい、おい、おい、こんなもん、炊いたら、家の中の物全部くるってしまうぞ!」 お茶ですと出してくれたのは若い少年。 「なあ伊織、これは何だ?」 「アヘンだよ、それもこんな塊!」 「木ではないのか?」 よく見ろ、似せてあるだけだ。 どれとよく見ると、木の粉を丁寧に固めなおし、流木のように見せかけている。 すげえな、よくわかったな。 だろ、だろ。 「匂いがきつくてそばには寄れなかったか?」 そうかもな。 「香木っていうのはな」 話を聞いて合点がいった。 母の言うとおり、木は流木のような形が多い、それを削る、だがその木は高価で、金持ちが手にしたがるのもわかるというのだ。 「でも、なぜ」 「それを調べるのが、あんたらお役人じゃないのかい?」 「わかってますよ、でも、アヘンなんて使ってまでして、相当、うらみでもあったのかな?」 「恨み?なぜそう思う?」 先ほどの奥方様の話だと香木を手にしたのは男の家の方。持っていたのならこんなことをするだろうか? 「男?どういうことだ?」 「あー、エーと結婚するはずだった男の家で見つけたんです」 ほう。 知らずに譲ってもらったか、買ったとしたら? 「売りつけたものかそれを持ってきたものが犯人か?」 「家の中のものだってありうるぞ?」 「結婚、それも結納の日にですか?皆喜んでいたそうですよ」 「ほう?なんか面白い話のようだな、始めから聞かせろ」 あちゃー、と時遅く、そこで詳しい話をすることとなったのだった。 「どう思われますか?」 夕方、帰ってきた父と大杉殿にその話をした。兄たちはもう家庭を築いているのでここへは帰ってこないが、たまに昼間、家に来ることがある。 「きな臭くなってきましたな」 「一橋は絡んでおらんと言い張る、だがこうもして、一橋を陥れようとする?」 「一橋は国の財政をにぎる、横山など、下っ端が結婚したことで何が動く?」 「財政か、下総の国の内情を調べてみるか?」 「ですが、これといった話は」 「明日、奉行が米問屋上州屋の息子たちに話を聞く、特に上の息子は、騒ぎだしたところへ乗り込み、自分の父親が殺されるところを見たんだ、ちゃんと聞かないと」 「それとアヘンの出どころですね」 「これだけ大きなものだと、横のつながりかもな」 あり得るなと顎をさする三人だった。 「まあ、まあ、そっくりですこと」 夕餉ができましたというと大杉様は帰ると言われた。 すると母は、魚を持って帰れといった。 「これはまた」 ザルにはたくさんの魚が下処理を終え乗っかっていた。 「とあるお方が持ってきてくださったんですよ」 「とあるお方って、まさか紀州の」 「ええ、同じ名前の幼子に良い場所を聞いて大漁だったと分けていただきましたの」 「同じ名?もしかして、新之助という子ですか?」 「ええ、上州屋さんの子だそうよ」 「何やらつながりができたようですね」 「はー、明日、来たりせんだろうな?」 「あり得る」 ハーとため息をつく三人だった。
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