青い蜜柑

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バシッ! 「いっ!」 何かが頭に当たった、転がっていたのは石。 血が流れ出た。 「やーい、人殺し―!」 「やーい、やーい!」 くっ! 「何をしている!」 やべ! 見つかった! 逃げる人影。 「どれ、少し切れたな」 「先生、俺は……」 「時間が過ぎるのを待つのだ、人というのは時間が過ぎれば忘れていく」 「でも、でもー」 「膏薬を塗ろう、向こうへ」 そこへ、バタバタと走る音。 「先生!」 「何事だ!」 「町方が、大河に話があると」 「町方が?」 玄関に行くと、だいぶ急いできたのか、息せき切った若い役人が共を従えて、待っていた。話をかいつまんで話すと、道場主は驚いた顔で、中へと案内してくれたのだった。 人は信用できない。 そう思ったのは、父に変な言いがかりを受けてからだ、父も母も、兄も、家の者、だれも信じない。 でも、新之助、彼にだけはわかってほしい。 友、そういってくれる彼だけには話したい。 足音が近づいてくる。 火事の後、俺は口をつぐんだ。だれも信用できないから。 「横山大河殿か?」 「はい、いかにも」 男たちは、座ると、こぶしをつき頭を下げ、名を名乗った。大岡。 「町奉行が何ゆえに?」 彼は、今日、というか今さっきまで、進と新之助、それと叔父と話をしていたという。 その内容をかいつまんで話してくれた、でも。 「ですが私には帰る場所がありません、助けてくれるのはもう誰も……」 「そうですね、新之助君に助けてほしいと言われました、それでいかがでしょう」 「え?」 「泣いている友を助けてと言われました」 にこりとほほ笑む人を信用してみようと思ったのは話を聞き、泣いていたんだ。 「お、俺」 涙は止まらない、袖はぐしょぐしょになっていく。 そして俺は、屋敷に帰らなくなっていたことを話した。 それは、ここにいる師範が知っている。 「匂いだけですか?」 「父が怒りっぽくなって、私は、何もしていないのに、父は私を盗人扱いした、それだけなら何とか我慢できたのですが」 「何か、あったのですか?」 「実は、下総の城の役人がお金を不正に使っていると家に入り込んできたことがあったのです、ちょうどその半月ほど前です。でも父はそれを私に擦り付けた、この私にですよ?役人は笑って、父に問いかけますが、父は頑として、私がやった、外で豪遊していると」 「すまぬが、まだ元服前ですよね」 「そうです、だからわたしはこの家がくるっていることを下総の祖父のもとへ手紙を出して、でも返事は」 「返ってない」 「はい」 「おかしいですね」 「おかしいです」 ふむ。 「下総の誰が来たのですか?」 「柴田様です、上屋敷には殿さまの息子であられる、総一郎様の下にお付きで、江戸の下総の国を束ねている方だと父には聞いておりました」 「それで?」 「父がおかしなことを言ってすみませんというと日を改めてくると、でもそのあとは」 「こなかった」 「はい、ああ、ただ」 「ただ?」 結納の品の中に、柴田様からも何かが来たのか、父と兄は、それを開けて大喜びでいたのを見ました、でも変なんです。 変とは? 流木のようなものを見ていたので。 「流木、確かか?」 「はい、ですが焼けてしまっては」 「焼けた、ああそうだな」 その後、大岡様はその前の日の様子と、俺がなぜその場にいなかったのを聞かれた。 子どもだから追い出された、外にいた新之助が来ているのを兄の進に聞いたから外に出た。 「では女たちは知らないし、上屋敷の者も知らないのだな」 「はい」彼らは、道場の者たちとも話をして帰ることに。 「大河、飯だぞ、大河?」 その数時間後大河はそこから消えることとなる。 自分からいなくなったのか、それとも誘拐か。はたまた、着物なども残したままその場から消えてしまったということで神隠しにあったのではなど噂が立ったのだった。
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