青い蜜柑

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そのころ上州屋の店先。 「また来てる」 この頃客が減ってきた。知っている客は裏口から来てくれるが、表から来ようとすると、変な連中が絡んで店に近づけない。 町方が見回りに来てくれているけど、時間を見計らったように消えては現れるから手に負えないんだ。 世間では将軍様が代わったらしい。 そんなんで役人たちも忙しいらしい。でもおいら達にはよくしてくれるからありがたいことだ。 叔父の店も変な奴らがいるそうだという。ただ春で、新米までには間があり、品物ももとから薄い時期になっていくから、客もわかっているからいいんだけどさー。 「ごめんよ」 「お役人様」 その声に除くと。 「大岡様!」 「よう、手紙だ!」 大河からの手紙は大岡様を通じて俺たちは文通している。 「よかったー、お元気になられたのですね」 「いつもすみません、粗茶ですが」 「すまねえな、伊織が帰ってきて話し込んじまって遅くなった」 「いいえ、ありがとうございます、ほんと、俺、うれしくて」 涙を拭く男の子の頭をなでた。 大河が消えた日、他の役人がうちにも来て、隠し立てはするなと言っていたが本当に知らなかった。大河はどこへ行ったんだろう?もしかしてと思ったけど、兄ちゃんも母ちゃんもほっと置けって、俺は探すこともできなくていたんだ、でもその後、大岡様が来て、伊織先生と下総の国へ行ったのを聞いたんだ、でもこれは絶対内緒だった。 だって、大河の母親の親は、今の殿様の家系、お父さんの方だってある程度の役人の家系になるんだ、たぶん俺たちはそのことの何かしらに巻き込まれた可能性があるのかもしれないって、聞かされていたんだ。 俺は大河に会いたいから行こうとした、でも大岡様は、それを狙っているのがいるから動かないでほしいと言って、手紙のやり取りを大岡様の仲介でするようになったんだ。 「あれからどうだい?」 「ええ、いつも通りです」と母は店の外に目をやった。 隠れてはいるが店の中をうかがっているごろつきどもがいる。 「あいつら、どうにかならないの?」 「こら新之助、お役人様も大変なんだぞ」と暖簾をくぐって入ってきたのは兄貴だ。 「おう、進、父さんの跡継ぎは安泰そうだな」 ありがとうございます。 「新之助、母さんも、俺話があるから」 「そうかい、それじゃあ」 「大岡様、また手紙書いてもいい?」 「ああ構わねえ」 「やったー!」 二人がいなくなるのを見計らって進は懐からあるものをだした。 「六月に入ると西方から新米が出始めます、指摘通り、問屋たちの集まりの帳簿です」 「それで?」 「ここを」 「問屋組頭井田屋」 五年で変わる組頭は将軍徳川からの銘を受け勘定方からその任を受ける。 その勘定方が一橋様でした。初めてお会いしましたが、あの人とは全然違う人でした。 「私は初めてその会合に出たので、それを初めて知りました」 「ああ、俺も初めて知った」 ですが、彼はあまり。 「あまり?」 おじから聞いたのですが、ほとんどが、信州屋さんを押していたそうです。 「信州屋、ああ、みその」 「はい、米とみそ、しょうゆはつながりがありますから。ですが、大豆、塩などの関係者が井田屋を押したらしいんです」 「ほう?」 「でも」 「でも?」 下総の国で取引をしていた農家から今年は売れない話をされたと叔父が帰り際に言った。どうしてかという話をしているときに、父と仲の良かった問屋の人がこっそりと教えてくれた。 「お金が配られたようです、それも、うちが店をたたむのを前提で」 「どういうことだい?」 「父が死ぬのをわかっているかのように話していたのを聞いたそうです、その方は僕を見て、早く下総へ行ったほうがいいと言ってくれましたが、叔父は反対しています」 「ふむ、この話しっているのは?」 「私と叔父だけです」 「ふむ、おっとそれだけじゃないな」 「ああそうなんです、あの男」 「あの男?」 「新之助が書いてもらった男です」 「一橋様の偽物か?」 「はい、なんといたのは、井田屋の後ろでした」帰りで、外で待っていて、ただ町人の格好だったから最初、間違いかなと思ったんです。でも本人です。 「言い切ったな」 すれ違ったとき、身長が小僧さんより少し高いくらいで俺より小さかったんです。 「そうかい、わかった。いいか、俺からつなぎがくるまで絶対に動くな、何があっても人の口車に乗るなよ」 「はい!」 進は利口だった。 その後、米はすべて売り、店にも倉にも何もないようして、客はすべて叔父のところへ回した。 そして大岡の言うとおり、じっと待ったのだ。
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