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食欲はあるの言葉どおり卵あんかけうどんを完食したルカが眠る傍らで、今日の試合の録画を見ていた。タブレット端末の音を消して追いかける負け試合に、悔しさが再燃する。
もう一度試合の時に戻っても、ルカの体調の悪さを見抜くのは難しそうだった。表情は変わらないし、サーブはミスしない。敵チームとしてスパイクを受けるほうが、ボールのキレとか重さで気づくかもしれない。でも無理だろうな。だって、ルカが隠そうとしていたから。
十代にして。国の期待を背負ったルカ。日本よりもランクが上のフランスで、常にかけられたメダルへの期待に晒されてきたエース。
「……っ、ぅ」
試合が終盤に差しかかると、ルカが苦しげに身じろいだ。聞こえた苦しそうな声に眉を寄せる。涙の粒が絡まるまつ毛が震え、しとどに濡れた双眸が俺を映す。手の甲を頬に押し付けると、先ほどよりも高い熱が伝わってきた。
「熱上がっちゃったな。ルカ、解熱剤飲もう、市販のやつだけど」
「……ハル」
「どした?」
「ご、めん」
「え?」
謝られるようなことはされてない。むしろ、謝りたいのはこっちなのに。
ぼろぼろと溢れる涙を見ていられなくて、タオルで拭った。ルカは俺を見ていない。
「勝たせられなくて、ごめん」
「お前だけの所為じゃない」
「俺は、エースなのに」
「調子悪い時は、みんなでカバーすんだよ」
弱々しく震える声に、俺は悔しくてたまらなくなった。ごめん。ごめんなさい。俺の所為で。熱が高くて朦朧としているのだろう。うわ言みたいに何度も何度も、謝罪の言葉を繰り返した。
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