ボクとトイとケイ

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 ミヤナさんは家の外にいた。  歩いてくるボクたちに気づいて、笑顔で手を振ってくれた。  握手できる距離まで近づいて、挨拶をする。マイクが間髪入れずにここへ来た理由をペラペラと喋り出す。すると、 「それは困ったわねぇ。もうすぐ――。ああ、ごめん。こっちの話。さあ、中に入って」  なんだろう。ミヤナさんが今、何かを隠した。心が少し、モヤモヤする。でも、敵意のような何かを感じなかったからだろうか。ボクの心から、それはゆっくり消えていく。    部屋へ入って席に着くと、ミヤナさんがコーヒーを出してくれた。  ボクは苦いコーヒーがあまり得意じゃないから、カップに四角い砂糖をいくつも落とした。 「おい、いくらなんでもいれすぎじゃね?」 「え、そうかな。マイクはいくつ入れたの?」 「んー? 一個」 「少なくない?」 「え、別にヘーキ」  ボクとマイクが砂糖の数について話していると、ミヤナさんが突然、くつくつと笑い始めた。 「何個入れたっていいんだよ。コーヒーの香りを楽しみたいのなら、少ない方がいいかもしれないけれど。コーヒーを飲みやすくしたいなら、たくさん入れたほうがいいって人もいるからね。その人が、〝こんなコーヒーが飲みたい〟って思うくらいに入れればいいんだよ」 「じゃあ……、えっと?」 「二人とも、多いんじゃない? とか、少ないんじゃない? って思うことも、それを問いかけることも自由なの。でも、そうだなぁ……。今はお互いに、その先に踏み込んだりはしていなかったけれど、もしもその先に踏み込んだら、こうしなよって強制されたりしたら、どう思う?」 「あっそ、って感じかなぁ」 「そっか。トッドは?」 「えっと、ボクは……ボクがいけなかったんだって思って、シュン、とする、かな?」 「なるほど。マイクは気にしないけど、トッドは気になるんだね」  ミヤナさんにいわれて、ボクはハッとした。似たようなことを言われても、人によって感じ方は違くて、その先に膨らむ気持ちもまた違うってことを、ふんわりとは理解していたように思う。でも、今、それがはっきりした気がした。 「もしかしたら、ケイくんとのこともさ、感じ方や考え方の違いが関係しているのかもね」 「うーん……」  考える。何か、感じ方の違いを押し付けてしまうようなことを言ったか、思い出す。でも、そんな覚えはない。 「もし時間があるなら、チモキさんのところにも行ってみたら? チモキさんならきっと、モヤモヤを晴らしてくれると思うよ」 「俺、時間あるし、チモキさんの家、知ってる!」 「トッドは?」 「えっと、時間は、ある。チモキさんの家は、知らない」 「じゃあ、連れてってやるよ。ミヤナさん、コーヒーありがとう」 「どういたしまして。また来てね。いつでも歓迎するから」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加